子育てを通じて知った楽しみの一つが、子どもたちと一緒に本を読むこと。「ぐりとぐら」「はらぺこあおむし」「かいじゅうたちのいるところ」「スイミー」「からすのパンやさん」「どろぼうがっこう」….。昔出会った、あるいは出会えなかった名作絵本たちを、この年齢になって読むのは、思いがけない楽しい体験だ。子どもがいなかったら僕には絶対になかった経験だったろう。
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今、ふたりの子どもは小学生。一緒の本を読んで感想の交流を楽しむこともできるようになった。僕も子どもの頃に好きだった『ズッコケシリーズ』は子供たちも大好きだ。特に娘とはよく一緒に読む。
ズッコケシリーズに限らず、僕のお薦め本を子どもが読んだり、子どものお薦め本を僕が読んだり、ということもある。『ナルニア国物語』シリーズも、そういう中で読んだ本。
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こういう経験からわかるのは、子どもには子どもならではの読書の楽しみ方があるなあということ。例えば、僕や娘と一緒にナルニア国物語の『ライオンと魔女』に挑戦した息子。小1の息子には明らかに難しすぎる本なのだけど、それなりに最後まで読み通してしまった。
印象的だったのは、感想を交換した時のこと。息子に「どこが面白かった?」と聞くと、「あのね、ビーバーのおくさんが面白かった」といったのだ。一瞬隙をつかれたような気持ちになったあとに、息子のような楽しみ方って自分には出来ないなあと気づいた。
僕がナルニア国物語を読むと、どうしても全体のストーリーや主要な登場人物に目をやってしまう。これまでの人生で身につけた、馴致された読み方のスタイルがある。また、中途半端に知識があるものだから、その知識を使って読んでしまう傾向もある。
でも、息子の読み方はそういう習慣に染まってない。自分が気になった端役や、面白いと思った台詞や言い回しに反応して、「ああ、この本は面白かった」となる。こういう読み方って、自分には出来ないなあ。つい、色々なものに縛られちゃう。もちろん子どもだって子どもなりに「縛られている」ものはあるのだろう。でも、子どもには子どもなりの本の読み方、楽しみ方があって、それはそれでひとつの世界を作り上げている。そういう楽しみ方を、もう少しおすそ分けしてもらえること。それは、子どもと一緒に本を読む特権なのだと思う。