話すことを書くことにどう活かすか?

 以前に下記エントリで書いたけれど、同じアウトプットとは言っても「話すこと」と「書くこと」にはかなり大きな違いがある。だから、「話すように書く」というのは無理な話。

 

「話すように書く」のは無理だという話

2014.10.12
しかし、話すことを書くことの授業に活用することはできる。それについて書いてあるのがUsing Talk to Support Writingという直球のタイトルの本。イギリスのエクセター大学の研究者たちが近隣の小学校と組んで行ったアクション・リサーチTalk to Text Projectについての本だ。

Using Talk to Support Writing
Ros Fisher
SAGE Publications Ltd
2010-04-22



このTalk to Textは、書くことの向上に貢献する「話す」アクティビティの開発を目的としたもので、5つの小学校で小1小2を対象に6クラスを調査し、対照群も設置した大規模な調査プロジェクト。数値による調査以外にも、各クラスで6人の生徒(男女×成績上中下の組み合わせの6パターン)の生徒を選んでの質的調査も行っている。

このプロジェクトの結果、「話す」活動が特に効果的とされたのは次の3つの局面だ。

(1)アイデアを考える局面
書く前に話し合ったり、ロールプレイをしたり、という話す活動が、アイデアを促進する。
(2)オーラル・リハーサルの局面
書く内容をいったん口に出すことで、話し言葉から書き言葉にスムーズに移行する。文章の共有にも効果的。
(3)リフレクションの局面
学力的に同レベルの生徒同士で相互に話しながらリフレクションをするのが効果的。


こういう局面ごとに話す活動を導入すると、作文教育に効果的ということだ。ここでは詳述はしないけれど、本ではおすすめのアクティビティがたくさん紹介されているので、小学校の先生には有益な本かもしれない。

僕の現場は中等教育なので、これがすぐに使えるかどうかはわからないが、特に(1)については感覚的にもわかる。気軽におしゃべりができる環境は、相互の創発を促す意味でも作文の授業にとても大切だ。また、個人的にはこういうアクション・リサーチのプロジェクト自体が面白いなと思う。日本でもこういうプロジェクトないですかね、参加してみたい。

ちなみに、この本では、プロジェクトに参加した生徒に作文についての質問紙調査も行っているのだが、「どうやって書くことを学んだか?」という問いに対する回答の傾向がふるっている。男子は「自分の力で」と思う傾向が女子よりも強く、また成績順だと、低い成績ほど「自分の力で」という傾向が強いのだそうだ。成績優秀者は「他人から」「戦略から」学んだと思っており、「自分の力で」とは思っていないという。なんとなく身の回りの生徒を思い浮かべて「あるある」と思ってしまった。

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