映画「みんなの学校」を見て

映画「みんなの学校」を見た。月曜日に世田谷でこの映画の上映会「『みんなの学校』を観て語る夕べ」が開かれて、それに参加してきたのだ。映画を観て、その後30分ほど感想を語り合うという企画。夜の企画なのに大勢の人が集まっていて、同僚や他校の地人も何名か参加していた。

さて、大阪の南住吉大空小学校を扱ったこのドキュメンタリー映画。「みんなで作るみんなの学校」を合言葉に、特別支援が必要な生徒を多数受け入れて一緒の生活を送っている日々の様子が綴られている。おそらくストーリーをわかりやすくするために木村校長ばかり目立つ映画の作りになっているが、 結束の強い教職員の皆さんが奮闘されている。特別支援が必要な子も安心して過ごせる空間がこうやって作られているのかと感銘を受けながら映画を見る。

ただ、大絶賛する周囲の人からすると、少し冷めた自分もいる。別にこの映画が、とか、ましてやこの学校に批判の余地が、ということでは全くなくて、どちらかというと僕の方に理由があるのだろう。結論から言うと、僕はやっぱりこういう映画のような雰囲気が苦手なのかなあと思う。

僕は小学校の頃、いわゆる「周囲から浮いている優等生」で、ビックリマンチョコを集めているクラスメートを横目に「お菓子会社にのせられて馬鹿みたい…」と思いながら、一人淡々と本を読んでいるような子だった。で、浮いていることが苦痛でもなく、ただ物足りなかったので、「ここの学校の人たちとは話があわないな」と中学受験をし、そして中学からは電車通学となった。以後、地元の公立小学校時代の人とは、きれいさっぱり一人もつながっていない。僕にとって小学校時代のクラスメートは「そんな価値のない人たち」だった。とても嫌な子だし、嫌な言い方だという自覚もあるが、当時の僕にとってそれが正直な気持ちだったと思う。

つまり、僕には「みんなの学校」とは逆に、子どもの頃から「つきあう友達を選ぶ」意識が明確にあり、そのために中学受験をしていた。その価値観は今でも拭えているわけではないのだと思う。今回この映画を見ていても「学力上位の子からしたらこの状況はどうだろうなあ」と思うことがいくつかあって、大空小学校の取り組みが素晴らしいことを一方では認めつつ、自分がこの学校で過ごしたいか、親として自分の子どもを行かせたいかという観点でも、必ずしもそうとは思えなかった。

あと、根本的なところで、僕はこの映画に出てくるような、濃厚なコミュニケーションが苦手なんだと思う。これって「大阪のノリ」なのかなあ、「言葉遣いは多少乱暴なようでいて、愛情深い」ってやつ? 僕はそもそも周囲の人間への関心が薄いので、あんなに声掛けされるよりは、もうちょっと放って置かれたほうが嬉しい。また、子どもの頃から「自分を苗字で呼び捨てにしてくる学校の教師」に対しては「勝手に人を呼び捨てにする失礼な人たち」と認識していたので、基本的に「名前を呼び捨て」な大空小学校のコミュニケーションがちょっと好きになれない。校長先生が若手の先生を呼び捨てにしていたのには正直「うっ…!ありえん…」とも思ってしまって、コミュニケーションのあり方が、全般的に、僕にとってはちょっと苦手な雰囲気を形成していた。

ここに書いたことは、決して何かの洞察でも、この映画に対する言及でもなく、「ああ、自分はそんな人なんだなあ」ということを再認識したという程度でしかない。 素晴らしい学校だとは思うけど、行きたい、自分の子どもを行かせたいとは思えない自分がいる。誰にとっても学べる環境を、というインクルーシブ教育の理念にはわりと共感していたと思っていたのだけど、肌感覚のところで自分はそこから遠い人なのかな、と改めて感じさせられたのは、正直なところ少しショックでもあった。

この記事のシェアはこちらからどうぞ!

1 個のコメント

  • 通りすがりのコメントで失礼いたします。
    初めて「みんなの学校」に対して大絶賛!泣ける!見るべき!とは違う感想を抱かれた方をお見かけしたので嬉しくて・・・!私も冷めた目で見てしまいました。
    学校行きたくない子がいたとして、(特別支援だろーが普通だろーが)「学校」しか教育の選択肢がないことが制度として問題だって、なんで思わないのかな?どうして必ず学校に行かなきゃいけないんだろう?とか。
    優秀な子は毎回毎回障害児の世話しなければならず、見える努力をしなければ、結果を出しても誉められもせず、それってある意味不公平じゃ?とか。
    悪い映画ではないのですが、周りが言うほど大絶賛はできずにいました。
    ちなみに私自身、2人の障害児の母ですが、先生たちの姿勢はとてもありがたいと思いつつも、なんだかズレてる気がして仕方ありません。これでいいのかな・・・?と。
    でも周りの評価はすごく高いし、妙なこと言おうものなら障害児ママグループから村八分にされるので、悶々としていた次第です・・・。
    通りすがり、失礼しました。
    違う感想を持たれている方もみえると知って、少しほっとしました(^^)