昨日、電車でこんな車内広告を見つけた。うーん、なんだか僕には日本語がわかりにくいぞ…。ということで、今日のブログはこの広告について。
まずはこの広告の文章を番号をつけて転載しよう。
①スマートフォンによる眼精疲労は、
②近視の過矯正・乱視の低矯正等、
③本人が気づかない視機能の軽度な
④アンバランス状態が原因にあります。⑤そこに長時間、極端に眼とモニター距離が近づくことで
⑥過度な調節・輻輳運動が起き、脳の負担となり生じたものです。
⑦「見えること」と「楽に見ること」とは違います。
パッと読むだけだとなんだかよく分からない文章である。僕がどこに引っかかったのか書いてみよう。
目次
因果関係のわかりにくさ
この文章は、スマートフォンによる眼精疲労の原因を書いているものだが、結局その原因が何なのかがわかりにくいのだ。①&④で「スマートフォンによる眼精疲労は…アンバランス状態が原因にあります」と書いてあるので、そこで原因の説明が終わったのかと思わせておきながら、その後を読むと①&⑥にも「スマートフォンによる眼精疲労は…脳の負担となり生じたものです」という因果関係が読み取れるので、読者はやや混乱するだろう。
そして改めてよく読むと②〜④までの「アンバランス状態」は、スマートフォンには直接関係がなさそうなのだ。どうもこの文章の主旨は、②〜④「眼の機能がもともとアンバランスな状態である時に」、スマートフォンを使うと、⑤&⑥「長時間眼とモニターの距離が近づくことで…脳の負担となり、(眼精疲労が)生じる」ということなのではないか。②〜④は前提となる眼の状態で、そこでスマートフォンが使われることで、⑤&⑥の問題が生じるということかな?と思う。
指示語がわかりにくい
上記のせいで、⑤「そこ」の内容もわかりにくくなっている。書き手の意図としては、④「そもそもアンバランスな状態である」ところに、⑤「長時間、極端に眼とモニター距離が近づくことで」と続くのだろう。しかし、読者としては①&④で一旦理由の説明が終わったように思えてしまうので、④の次に⑤「そこ」が来ると「え、まだ理由の説明が続くの?」と戸惑ってしまうのだ。それが、「そこ」の指示語の内容を把握しにくくしている。
主述の対応の不適切さ
上記の問題に比べると小さなことながら、「スマートフォンによる眼精疲労は…アンバランス状態が原因にあります」という書き方も、主述が綺麗に対応した文章とは言えない。「スマートフォンによる眼精疲労は…アンバランス(な)状態が原因で起きたものです」または「「スマートフォンによる眼精疲労の原因は…アンバランス(な)状態にあります」とすべきところだろう。
修飾語と被修飾語の係り受けの分かりにくさ
さらに、修飾する語と被修飾語の係り受けもわかりにくい。例えば③&④「本人が気づかない視機能の軽度な/アンバランス状態が原因にあります」だと、「本人が気づかない」が「視機能」だけに係る語だと誤解する余地が生まれる。ここは、「本人が気づかないほど軽度な、視機能のアンバランス状態」「本人が気づかないほど軽度に視機能のバランスが崩れた状態」などと直すべきだろう。
舌足らずな表現
加えて、小さなことだが、④「アンバランス状態」や⑤「眼とモニター距離」などの表現にも難がある。これらは理解できなくはないが、やや舌足らずな表現だろう。それぞれ、④は「アンバランスな状態」、⑤は「眼とモニターの距離」などと書き直すと良いはずだ。
※以下の2つは、わかりにくさの要因になっているけど許容範囲、もしくは仕方ないかなと思うもの。
難解な表現
「輻輳」(方々から色々なものが一箇所に集まること)はもしかすると馴染みの薄い表現かもしれない。ただ、ここは「輻輳運動」という医学の専門用語だろうから仕方ないかなと思う。
やや飛躍のある結論
⑦「「見えること」と「楽に見ること」とは違います」という結論は、①〜⑥までと比べてやや飛躍がある。とはいえ、これは「楽に見ること」を助ける眼鏡の宣伝なので許容範囲。この程度の飛躍ならどこにでもありふれているし、飛躍のない広告など魅力的ではないだろう。
こんな風に書き直すと良いかな?
ということで、以上の要素を考慮しながら書き直しに挑戦してみたよ。「輻輳運動」は専門用語だろうから尊重してそのままにしておいた。
①スマートフォンによる眼精疲労は、なぜ起きるのでしょうか。②近視の過矯正・乱視の低矯正など、視機能のバランスが本人も気づかないほど軽度に崩れている時に、⑤眼とモニターの距離が長時間にわたって近づくと、⑥眼が過度に調節・輻輳運動を起こし、それが脳の負担となることが原因です。⑦つまり「見えること」と「楽に見ること」は違うのです。
多分意味としてはこの改作の方がわかりやすいと思うのだけど、これだと広告にはならないなあ…。本当はこれをベースにして、広告になるような表現を考えないといけないんだろうなと思いつつ、力尽きたので今日のエントリはこれまで。どなたか、もっとうまい改作例を考えてください。