子どもの豊かな言語環境をつくる。保護者向けセミナーをやってみたよ。

最近は読書記録が続いているので学校のことを。実は風越学園では、最近になって、国語の保護者会や保護者向けセミナーを企画した。どちらも今後につなげたい動きだったので、ここにも書き残しておこう。

写真は、学校のアドベンチャープログラム・スノーシューハイクの引率で行った高峰高原。この時期の高峰山には初めて登ったな。初めてのスノーシューが楽しすぎて、引率帰りのバスの中でスノーシューを衝動買いしてしまった(笑)

目次

風越学園の「ことばブランチ」

風越学園では、「分掌」を「ブランチ」と言っている。通常なら「国語科」と言われる僕の所属は、ここでは「ことばブランチ」だ。ただ、「国語」と「ことば」の違いは意外に大きくて、国語というと小学校以降の学校の授業になってしまうが「ことば」というと、もう少し広い視野で子どもの言語生活をとらえることができる。幼稚園から中学校までの12年がある風越は、「ことば」という括りがぴったりだ。

目標は「12年のつながり」

その「ことばブランチ」の今年の目標の一つが「12年のつながり」を意識すること。幼稚園から中学校までのスパンがあっても、それを見通さずに各自が各自の実践をやっていては、効果的なつながりは生まれない。これは正直言っていまだに課題なのだけど、自分に限って言えば、今年は「自分の授業を中学校のりんちゃん(甲斐利恵子)の授業につなげること」をそれなりに意識している。僕とりんちゃんの授業スタイルはだいぶ違うところもあるが、読書1万ページや音読をはじめ、りんちゃんが中学でやってきた実践を部分的に真似しているのもそのためだし、漢字指導にしても、どういう力や感覚を身につけて中学に上げるとりんちゃんがやりやすいかを考えて、授業前の漢字クイズをやってきた。お互いのやりたいことを尊重しつつ、「あすこま→りんちゃん」のリレーをちゃんと機能させること。それは、ぼくの今の関心事の一つである。

一方で、自分の受け持ち学年(小5・6年)より「下」、つまり幼稚園から小学校3・4年生までの子に向けては、これまであまりアプローチできていない。「別に他のスタッフは作家の時間や読書家の時間をやりに風越にきたのではないのだから…」「特に幼稚園のスタッフは屋外遊びを大事にしているから…」という遠慮というか、意識の壁が僕にあったのも事実だ。ただ、通常の小学校の授業配当数(小1・2では週8〜9時間、小3・4では週7時間)を見てもわかるように、子どもの言語能力育成に重要なのはむしろ小学校4年以下である。そこに自分の意識をちゃんと向けたいなという思いは、頭の片隅にいつもあった

「風越のことばの学び懇談会」

そんな中で、「あ、これじゃいけない」と思ったのは、地域のあるイベントで出会った風越学園の保護者に「読書家の時間」について聞かれたのがきっかけ。考えてみると、「教科書を使わない」「『作家の時間』『読書家の時間』という、保護者からすると得体の知れない授業をやっている」点で、十分あやしく思われて当然なのだ。どんな意図でそういう授業をやっているのか、風越学園がことばの学びをどう考えているのか。12年間の見通しを保護者に持ってもらうだけでも、安心してもらえることは多い。

そんなわけで12月、「風越のことばの学び懇談会」という名の「国語科の保護者会」を開いた。教科ごとの保護者会をやっている学校は聞いたことあるけど、自分で体験するのははじめて。全体会のあとに年齢ごとに3つのグループにわかれての分科会形式で進めたのだけど、これが良かった。実のところ、僕たちスタッフも日常他のグループがやっていることに目を配る余裕がない。この保護者会をきっかけに、スタッフ内でも、風越がことばの発達に関して大事にしたいことを確認し、それぞれの学年別LGでの様子を共有できた。当日も、40名近い保護者の方に参加してもらえて、けっこう良い反応をいただけたと思う。

 

セミナー「子どもの豊かな言語環境をつくる」

これに勇気をもらって、今度は「子どもの豊かな言語環境をつくる」と題したセミナーを企画した。これは、乳児・幼児・小学校低学年までの児童がそもそもどうやって言葉を増やしていくのか、それを支援する豊かな言語環境はなにか、家庭の望ましいサポートはどんなものかを話題にしたセミナー。もちろん僕は専門家じゃないので、これまで読んできた色々な本を題材に、幼稚園スタッフに聞き役になってもらって話したにすぎない。元ネタは、これまでこのブログでもよく出てきた本です。

今回は、合計70名を超える保護者からの申込みをいただいて、関心の高さがうかがえた。終わったあとに「面白かったです」と声をかけてくださる方もいてありがたかった。普通は対話やグループワークが多い風越の保護者会の中で、珍しいほど僕の一方的なレクチャーだったので、それもまた逆に新鮮だったようだ。

学校と家庭で、豊かな言語環境をつくりたい!

保護者会、そして今回のセミナーと、学校がはじまって3年目になって、ことばブランチとして、はじめて幼稚園〜小学校中学年くらいまでの保護者層にアプローチした。やってよかったなと思う。何よりもまず、この時期の言語環境はむちゃくちゃ大切で、その言語環境のメインは学校と家庭なのだ。そのためには、どんな言語環境が望ましいのかという理想像や、言語発達に関する知識を、学校と家庭で共有することはとても大事だと僕は思う。これには、単に「こうするといいよ」という情報提供だけでなく、例えば教育熱心な保護者が無理に早いうちから文字を読めることに子どもを促してしまうような、そんな誤った熱心さに陥るのを避ける意味あいもある。

今回はセミナーという形だったけど、今後は、保護者が絵本をおすすめしあったり、読書会したり、子どもの言葉の学習について悩みを共有する会を、定期的に開けたらいいなと思う。例えば子どもの書字や読字の困難だって、早いうちから学校と保護者がコミュニケーションをとっていれば、対応可能なことも多いはずだし、何より保護者が精神的に楽になれるはず。こちらの負担もあるのであまり頻繁には難しいけど、こういう試みは、長い目で見た時に、とても効果を上げるんじゃないかと思う。何より、中高教員時代には手が伸ばせなかったフィールドだ。これからぜひ、この動きを続けていきたい。

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