[読書]冊数は多め、ジャンルはノンフィクションばかりな、2022年11月の読書。

すみません、うっかりブログに書くのを忘れていた毎月の読書記録。遅ればせながら、2022年11月の読書記録を書き残しておきます。この月は絵本含めて20冊近く読んだんですよ。残業もかなりしたのに、われながらかなり頑張ったな…という月。たまにはこんなこともある。ただ、「読書1万ページ」を風越の子たちと一緒に記録してたら、のぞいた子に「あすこま、物語全然読んでないじゃん!読まないと」と注意されてしまった。確かに物語は2冊だけ。ノンフィクションに偏ってるな…。というわけで、こちらでもノンフィクションの紹介になります。

目次

今月はまさにノンフィクション月間

古田徹也『いつもの言葉を哲学する』は、若者言葉の「ガチャ」、オノマトペ、「先生」などの自称、漢字とかなの混ぜ書きなど、日常的なさまざまな言語現象をとりあげて考察していくエッセイ。長さも短いし読みやすいし、これは入試とかで使われそうだなあ…というのが第一印象。中でも、「やさしい日本語」を取り上げて、これの本来の趣旨は理解しつつも、その規範化がなされると「ニュースピーク」化してしまう危険性を指摘する章が面白かった。

ベストセラーになっている田中孝幸『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』。風越の子に「面白い」と言われて読んでみたけど、確かに面白い。地球儀から眺めるというシンプルな方法だけど、そこからでも色々と見えてくるんだなあ。世界の大きな部分(7割)を海が占めていて、その要素が国家間の力学にかなり影響を与えているっていうのは、個人的にも大きな発見だった。

サンドラ・へフェリン『ほんとうの多様性についての話をしよう』の著者は、日本人の母とドイツ人の父を持つ日本人(でもあり、同時にドイツ人)。「日本人の髪のために作られたシャンプー」などの表現に、無意識に「日本人」の限定があるという指摘はなるほどと頷かざるを得ない。また、「多様性とはすべてを受け入れることではない」の章も色々と考えさせられた。ここは、中学生や高校生とも一緒に読んでみたいところだなあ。

教育系は、イモニイを描いた本が良かった!

おおたとしまさ『いま、ここで輝く』。NHKの「プロフェッショナル・仕事の流儀」でも取材されていた数学教師・井本陽久さんの取材記録。テレビ番組も見たんだけど、こちらの本の方が個人的には良かった。この人、本当に絶対的に「承認」しているんだ、とびっくりした。比べないで承認することで安心して挑戦できるようにする。中高でこれができているのはすごいな。「子どもが『ふざけ』『いたずら』『ずる』『脱線』をしているときは、いちばん自分の頭で考えているときなんです」(p190)「子どものやる気を引き出したいなら、いま難なくできていることをどんどん言ってあげることですね」(p196)「準備をするっていうのは視点をもつこと。視点を持ったら無意識でも発見ができるようになる」(pp197)など、印象に残った言葉がいくつもあった。

評価の本も結構読みました…

他では、ブログにも書いた関田一彦・渡辺貴裕・仲道雅輝『教育評価との付き合い方』や、石井英真、鈴木秀幸(編著)『ヤマ場をおさえる学習評価 小学校編』石井英真『授業づくりの深め方』など、この月は評価に関する本をいくつか読みました。個人的なイチオシは、『教育評価との付き合い方』です。

[読書]「評価、どうしよう?」と考えたくなる好著。関田一彦・渡辺貴裕・仲道雅輝『教育評価との付き合い方』

2022.11.23

このうち、ブログで言及しなかった澤井陽介『できる評価、続けられる評価』は、著者でわかるように「学習指導要領ありき」の本だけど、「続けられる評価」という言葉に魅力を感じる人もいると思う。マニュアル本としてはまあ読みやすくて、3観点で実際にどう評価するのよ?と困っている人にはおすすめできる。

山読書のNo.1は栗城史多さんを描いた『デス・ゾーン』

今月の山系の読書のベストもノンフィクション。河野啓『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』。登山家の栗城史数(くりき・のぶかず)氏がエベレストで滑落死するまでの人生を追ったノンフィクション。「夢の共有」を掲げて登山を劇場にしようとした栗城が、自分の登山の実力に見合わないエベレストの難関ルートの「単独」「無酸素」登頂を目指して身を滅ぼしていく….と書くと酷薄だが、「観衆」を意識して振る舞うことの恐ろしさを感じる一冊。

ファンなら手元に持っておきたい『江戸川乱歩語辞典』

最後に、完全に個人的趣味で面白かった本を。奈落一騎『江戸川乱歩語辞典』は、「辞典」と言っても、ムック本。乱歩の作品の登場人物やその台詞やら関連する用語が、辞典風に解説されている。なかでも、「悪霊」の掲載をめぐる新青年青年部の予告文の変遷に爆笑してしまった。これ、清水義範のパスティーシュ小説「序文」をリアルでやっている! 乱歩ファンとしては持っているだけで楽しい、読んでまた楽しい1冊。今回は図書館で借りたけど、手元に置いておきたいなあ。

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