ブッククラブ前半戦のふりかえり。構成的なブッククラブから、子どもに委ねるブッククラブへ。その鍵は…?

風越学園では、今日がアウトプットデイ。昨日は準備、明日は片付けで国語の授業は小休止なのだけど、木曜からは『時をさまようタック』ブッククラブの後半戦に向かいます。今日はそこに向けて考えをまとめるためのエントリ。

写真は、浅間山北麓ビジターセンターから見える浅間山。こちらの施設には、56年のテーマプロジェクト「浅間山を究める」で大変お世話になりました…。群馬県側から見る浅間山は、剣ヶ峰などが見えないせいか、よりなだらかに見えますね。

目次

ブッククラブに入るまでの準備

授業前にやってきた準備としては、以下の通り。

  • 同じ国語科の同僚のゆっこと2人で『時をさまようタック』を読む。
  • それをふまえて、もう一度通読して、すべての章ごとにポイントになる問いを考える。
  • ラファエルの『言語力を育てるブッククラブ』を読み、自分の作った問いと比較する。
  • ゴリさん(岩瀬直樹さん)が小学校教諭時代にやっていたブッククラブの板書写真や子どものノートの写真をもらう。
  • 同じく、ゴリさんの小学校教諭時代のやり方を聞く。

準備をしながら決めていたのは、「はじめに」から第4章までは、全員で読もうということ。この物語は3つの話がからみあう展開で、それぞれの舞台設定や登場人物設定を読み誤ると話の筋がわからなくなる。最初はゆっくり、と決めていた。

構成的なブッククラブ、やってます

予定どおり、4章までは全体で進み、その後は、抽選で決めた3〜4人チームに分かれてのブッククラブをやっている。今の所、次のような感じで進行中だ。全体として、構成的なブッククラブだと思う。

予習ノートを書く回→話し合う回のターン制

もともとの予定では、「読むのは家で、話し合うのは学校で」と、学校では話し合いをするだけのつもりだったのだけど、チームに分かれての初回の授業から、読んでこない子が多くて頭を抱えた。風越の子は「宿題はやるもの」という観念が薄いので、こういう時はやりにくい…(笑)

そこで、ゴリさんにも相談して、次からは、ひきつづき家で読んでくるにしても、授業でも「話し合いに向けて予習ノートを書く回」と「話し合いをする回」に分けることにした。事前にノートがしっかり準備されていると、当然ながらブッククラブももりあがる。少なくとも「話すことがない」人は少なくなる。単純に授業回数は2倍必要になるのだが、うん、まあ、必要だな….。

話し合いの流れは3本構成

ブッククラブの「話し合いをする回」も、今の所は3本構成にしている。最初は僕の方で「ブッククラブイントロクイズ!」と題して、「ジェシィは何歳?」レベルの、事実確認のクイズを数問出している。その後、僕が事前に予習した「ぜひ話し合ってほしい問い」をトークテーマとして出して、それぞれ5分くらいで話してもらい、その後、子どもたちが自分のノートから話し合いたい問いを見つけて話し合う、という流れだ。

最初にイントロクイズを出すのは、発言する時に「何ページ」と根拠をきちんと言う習慣をつけるためのもの。これは現代文教員の性なのだろうが、僕は本文の根拠にもとづかないで全体の印象で語るブッククラブは好きではない。「何ページにこう書いてあるからこう」という姿勢を身に着けてほしいのだ。

「ぜひ話してほしいトークテーマ」は、僕の事前の予習メモをもとにして、比喩だったり、描写だったり、登場人物の心情の変化だったり、人物同士の考え方の違いに注目したりと、こちらで「この章はこの観点で読んでほしいな」というテーマを選んでいる。

子どもたちが、自分の予習ノートのメモを見ながら気になることを自由に話せるのはその後なので、わりと構成的なブッククラブのはずだ。

もちろん、上手に話し合いができているグループの動画をみんなに見せて良いところを付箋に書いて共有したり、良いノートの写真をとって共有したり、そういう基本は地道にやっています…。

特派員制度、はじまる….!

そんな中、予定外に始まったのが、この「特派員制度」。先週の金曜日、あるグループの子が「自分は読んできているのに他の2人が読んでこなくて話し合いにならない」と不満を訴えてきたのがきっかけ。残りの2人に話を聞くと、この本が難しかったり興味を持てなかったりで、読む気がおきないらしい。仕方なく、チームを再編して、この2人には「特派員」として、他のブッククラブの様子をレポートする役目を受け持ってもらうことにした。次のクラスでも特派員に立候補する子がいて、やる気がなかったこの子たちも大張り切り。活躍の場があるのは良いことだと思う。他のグループの様子も共有してもらえるし、彼らもブッククラブを観察して学べることができるはず。今後の活躍に期待だ。

この特派員制度創設には、事前の伏線がある。実は、僕の受け持つ2クラスのうちの1クラスは、授業中でもこちらの指示を聞かずにおしゃべりしちゃう子も多いクラスで、一度授業をストップしてこの状況について話し合うこともあるほどだった。僕は、毎週定例の教科会でこの様子を共有し、困っているけど、どうしたらいいか相談した。そうしたら、りんちゃん(甲斐利恵子先生)をはじめ同僚から「話ができない、聞けない状況のであれば、その子たちに無理に読ませるのではなく、何か抜本的な変更をしても良いのかも」という助言をもらったのだ。だから、この特派員制度もすぐに思いきれたのだと思う。持つべきものは相談できる同僚ですね…!

今後、子ども中心にするための鍵は…?

ブッククラブも残りあと6回。話し合いの回は3回だけだ。この残り3回は、僕の与える「トークテーマ」について話す時間を減らして、できるだけ自分たちの問いをもとに話す時間を増やしていきたい。

その鍵の一つは、予習ノートを作る段階で、「本について語る語彙」を増やすことなのだろう。というのも、前回の授業で、あるグループに「対比」や「設定」という言葉を使って本の感想を交流する子たちがいた。すぐそれを全体に共有したのだけど、後から思えば、大村はまやりんちゃんであれば、事前に「本の感想を交流するための語彙」を手引きにして配布するに違いないのである。そういうものが最初からあったほうが、絶対に話し合いは豊かになる。次回の予習ノートを作る回では、この「本の感想を交流するための語彙」を配るところから始めようと思う。

子ども中心にシフトするもう一つの鍵が、話し合いの際の特派員制度を活用すること。自分たちのプロセスをメタ認知するのが難しいだけに、話し合いを観察する人の存在は大きい。特派員の彼らにどんなミッションを与えると、クラス全体のブッククラブの質が高まるだろうか。単に「他のグループのいいところを共有して」ではない指示のほうが、ぐっと活躍できるはずだ。これも考えたい。

色々なブッククラブがあるけれど

「ブッククラブ」と一口にいっても、色々なやり方がある。ラファエルのブッククラブ(下記参照)は、話す内容をすべて教師が決める極めて構成的なもの。このデザインで、子どもの読み書き話す聞くをきちんと伸ばすぞ、というデザインだ。

また、予習の段階で聞いたゴリさん(岩瀬さん)のブッククラブも、ラファエルほどではないにしても結構丁寧に積み上げている。ゴリさんのは、最初はとても構成的で、徐々に手放すイメージ。僕が今回一番参考にしているのは、このゴリさんのブッククラブだ(ついでにいうと、風越にある『時をさまようタック』も、もともとゴリさんが教室で使っていたものである)。

一方、同じブッククラブでも、例えば『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』に書かれた、これも風越の同僚のKAIさんのブッククラブはもっと大胆に子どもにゆだねている。本の内容理解についてはほとんど介入せず、ブッククラブのプロセスに特化したフィードバックをしているのも特徴的だ。このKAIさん、いまは風越でも放課後に『びりっかすの神さま』ブッククラブを有志の子ども・保護者とやっていて、その進め方も気になるところ。

とまあ、ブッククラブにも色々ある。風越は、ゴリさんやKAIさんなど、同僚にもブッククラブをやってきた人がいるし、国語の教科会などでもりんちゃんやゆっこはじめ気軽に相談できるし、いまは筑波大学の勝田さんも来てくれているというボーナス期間でもある。いろいろな人の声を聞きながら、ブッククラブ後半戦、良いものにしていこう!

 

この記事のシェアはこちらからどうぞ!