[読書]ナタリー・バビット『時をさまようタック』&ラファエル他『言語力を育てるブッククラブ』

先の振り返りで書いた「説明と描写」ユニットを終えて、56年の国語の授業はブッククラブに入った。ブッククラブで読むのは『時をさまようタック』。原作Tuck, Everlastingの初版は1975年、邦訳も1989年刊行ととても古い本だが、名高い名作だ。以前に読んだ時に、自分の読書記録ノートに10点中9点の高得点でメモを書いてあり、今回は授業に向けての再読になった。

ため息をつくほど美しい冒頭から

この本、とにかく冒頭が素晴らしい。

八月のはじめの一週間は、とまった観覧車のいちばん上のシートみたいに、夏のてっぺんにひっかかった時間。長い一年のてっぺんといってもいい。その前の数週間は、おだやかな春から夏にむかうのぼり坂だし、そのあとの数週間は、すずしい秋へむかうくだり坂だけれど、八月の第一週はじっとしてうごかない。ただ暑いだけ。それに、みょうにしずかだ。

からはじまるオープニングは、ため息をつくほどに美しい。そして、そこから3つの出来事が起きる。息子のジェシィとマイルズに会うために、10年ぶりにトゥリーギャップ村の外れにある森に向かうメイ・タック。その森の持ち主であるフォスター家の一人娘で、規律の厳しい家に我慢できなくなって家出を決心するウィニー・フォスター。そして、誰かを探しにそのフォスター家の門にあらわれた黄色い服の旅人。この3つの出来事がどう結びつくのか、読者は興味をそそられながら先を読み進め、やがてタック一家の秘密を知ることになる。描写も美しく、「人生の幸福とは何か?」というテーマ性もあり、最後には急展開も。複数のストーリーがからみあう複雑さも含めて、小学校高学年のブッククラブにぴったりの一冊だ

また今回、予習として風越の同僚と二人で読み進めたのだけど、一人で読むと読み流してしまう発見も数多くあった。やはり、誰かと一緒に読むのって面白い。

ラファエル他『言語力を育てるブッククラブ』も参考に

同僚とのペア読書のあとには、授業前の予習として、ラファエル他『言語力を育てるブッククラブ』も参照した。この本は、ブッククラブの事例として『時をさまようタック』にまるごと1章を割いており、全25章あるタックのお話のうち、どの章でどの問題を扱うと良いかまで細かく丁寧に書かれている。僕もタックを読みながら各章ごとに「これが鍵になる問いかな」と考えながら読んでおり、結果的にこの本で提示された問いと重なる部分も多かった。同意できない部分も、逆に、自分の物語の授業観が浮き彫りになって面白い。

また、ラファエルのブッククラブは、教師があらかじめ問いを設定し、それを順に全て扱うことで、計画的に読む・話す・聴く・書くを総合的に学ぶカリキュラムになっている。ただ、子どもが自分で問いを考えて自由に議論する余地はない(ように見える)。そこをどう評価するかも、授業者の好みが出るだろう。いずれにせよ、タックで授業をしたい人には、間違いなく参考になる本だ。

DVDもあり!….が、原作とはちょっと違う

『時をさまようタック』には、ディズニーによる映画のDVDもある。こちらは、作品のテーマ自体は共通していても、原作とはちょこちょこ違う部分もある。一番は、ウィニーとジェシィのロマンスが強調されているため、ウィニーが原作よりもだいぶ年上の設定になっていることだ。原作と異なる2人のエピソードも追加されている。最後の「事件」にも原作にはない要素が加わっている(余談ながら、ここで見ていて「おいおい」とツッコミたくなる箇所もあった)。

とまあ、原作どおりの映画化ではないので、小学生にはやや複雑な原作の理解を補うために観るのは向かない。でも、原作を読み終わった人が、原作と比べながら観るのにはちょうどいい。原作の静かなトーンや美しさは、映画版でも十分に保たれてます。

小学高学年以上におすすめの古典的名作です

原作『時をさまようタック』は、もう刊行年代としては「古典」の域に入ると思うけど、小中学生におすすめしたい一冊。特に、本をめぐって語り合うブッククラブに向くと思うなあ。また、授業でこの本を扱う予定の先生方には、ラファエルのブッククラブ本とDVDもあわせておすすめしたい。教材研究に役立つはずだ。

さて、僕の授業でのブッククラブは、3回めの今日でようやく第4章まできたところ。ここまでは全体で丁寧に時間をかけて、舞台設定や人物関係をおさえてきた。次からが、いよいよグループごとでのブッククラブが本格的にはじまる。この土日に全部の再々読や各章の鍵になる質問のチェックを終えて、今日はタックでのブッククラブ実践の先達・ゴリさん(岩瀬直樹さん)にもポイントを聞いて、ようやく準備が整った感じ。今後、どうなるか楽しみ!

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