今回のライティング・ワークショップも「下書き締め切り」をすぎた。文章を書くのに熟達した人とそうでない人で差がつくのが「書く前」と「いったん書いた後」に時間をかけるかどうか。書くペースはそれぞれとはいえ、授業としてはそろそろ「いったん書いたあと」のフェーズに移っていく。
その段階にある生徒に役にたつのがこの本。文章を書き上げた後に、それを整えることに特化した本だ。手軽に読めるし、なかなか良くまとまっている。
「推敲」の中でも「修正」に焦点を当てる
「推敲」(revision)には、大きく言って「文章の構成や骨格そのものを見直す、大きな変更」(まさにre-vison)と「読みやすくするために文章の字句を整える変更」(ライティング・ワークショップ関連の日本語の本では「修正」と訳されています)があるけど、この本のターゲットは後者の「修正」に当たるところ。
まずは「削る」ことを大原則として、「接続詞を削る」「無駄に長い表現を削る」「不必要な情報を削る」などの具体的な提案をしていく。僕も、「初稿の文章は文意を変えないで1割から2割は削れるはず」と生徒に伝えるし、カンファランスでは実際に生徒の文章を削ってみせるけど、それくらい、最初に書いた文章は無駄が多いものなのだ。
他にも、主語と述語のねじれ、表記の不統一、文末の単調さなど、いくつかの問題を整えていく上で必要な着眼点がまとめられている。特別なことはないけど、逆にいうと、文章を整えるのに必要な技術がコンパクトにまとまっているのがとてもいい。
「音読」と「自分のクセを知る」ことの大切さ
中でもいいなと思ったのが、書いた文章の音読を勧めていること。これ、やってない生徒も多いけど、とても大事だと思っている。音読すると、リズムや文末表現の単調さに気づく。主述のねじれや表記の不統一などの問題点にも気づきやすくなる。音読することは、大きなメリットがある。僕だってもし十分な時間があれば、一回書き上げた生徒にはカンファランスで音読させて「何か気づいたことある?」と聞いて回りたいくらい。
もう一つ、「自分のクセを知る」ことも大事だなあと思う。僕のクセは「〜という」という表現や(ここ笑うところ)、「だなあ」などの言い方をよく使ってしまうこと(使ってますね)。加えて、油断すると「〜のように思われる」と書いてしまうことも(シンプルに「〜と思う」「〜である」で良い)。こういう自分のクセや頻出フレーズは頭に入れておきたい。
文章を整える技術がコンパクトにまとまった本
この本は、タイトルの通り「文章を整える技術」がコンパクトにまとまっている。文章を書きたい人にも、書くことについて教える国語の教師にも役にたつ。読んでよかった本です。