高等学校「現代文B」の8社17種類の教科書に掲載されている評論(のべ368作品)の著者名、作品名、出典のリストを作成しました。自分の授業用教材として作ったので間違いも多いかと思いますが、使いたい方はお使いください(そして願わくば間違いを僕に教えてくれたり、データを補充したりしてください!)。
目次
「現代文B」教科書掲載評論リストを作りました
高校2年生の現代文の授業(リーディング・ワークショップ)で、生徒に評論というジャンルに親しんでもらうために、「現代文B」8社17種類の教科書に掲載されている評論リストを作りました(全教科書をカバーしているわけではありません)。高校生に現代文を教える立場の方の教材探し、高校図書館司書の方の選書、あるいは高校生を含む一般の方の読書の参考になればと思って、公開します。
- もともとあすこまのリーディング・ワークショップの授業で生徒用の参考リストとして作成したものです。それ以外のケースで万一問題が生じた時の責任は負えません。
- あすこまはミスのない丁寧な仕事ができない人です。ダウンロードした方はミスの発見と報告(修正済みファイルをくれたらなお嬉しい)にご協力ください。
- 4月末に職場の本棚にあった教科書採択見本から作ったデータです。全ての教科書を網羅したデータではありません。誰かデータを補充して僕にくれないかなー。
- 2018.5.3時点で、数研出版「新編現代文B」、東京書籍「新編現代文B」「精選現代文B」がないはずです。
「現代文B」教科書掲載評論リスト(ダウンロード自由)
教科書「現代文B」H30年度版の評論出典リスト (Excel)
「現代文B」ってなに?という人は…
高校の「国語」の授業は、1年で必修の「国語総合」を学び、2年〜3年は「現代文A」「現代文B」「古典A」「古典B」「国語表現」などから選択する形になります。AとBの違いはすごくざっくりいうと「Bの方がAより難しい」のだけど、ちゃんとした説明は高校の学習指導要領をごらんください。「現代文B」は多くの進学校で高校2年〜3年にかけて選択されています。
高校学習指導要領・国語
評論リスト作成おまけの与太話
以下、おまけ的に、2018.5.3時点でアップロードしたデータに基づいて気づいた与太話を。
各社、評論を8〜32編掲載
各社、掲載されている評論は8〜32編。一番多いのは、都内の進学校では採択が多い印象のある筑摩書房「精選現代文B」だ(うちの学校もこれ)。筑摩は副読本的な「ちくま評論選」も定評ありますね。
頻出テーマと頻出キーワードの解説
評論というジャンルは、良くも悪くも高校生の日常の読書とは乖離している。そもそも評論は広い意味では「批評し論じる文章」なのだけど、教科書でよく掲載されるのは、現代の時代状況や人間観などを論じたもので、科学論、身体論、芸術論、現代思想などの「頻出テーマ」がある。
読解力の多くを占めるのは語彙と背景知識でもあるので、こういう分野の背景知識や語彙を大雑把にでも知っておくと、読むのが楽になるのは間違いない。そのため、各教科書とも、コラム的な解説や巻末資料の形で、頻出キーワードや頻出テーマについて解説しているものが多い。
巷の現代文参考書や単語集でも、こういうアプローチはたくさんある。
定番の頻出作家・頻出作品たち
与太話的の続きとして、リストの中から、最頻出作家・頻出作品を挙げておこう。重複カウントありののべ数で、分母は368。
- 丸山真男。作品は全て「「である」ことと「する」こと」(13冊)
- 鷲田清一。作品は色々!(12冊)
- 岩井克人。作品は「ヴェニスの商人の資本論」か「未来世代への責任」が中心(9冊)
- 清岡卓行。作品は「手の変幻」(ミロのヴィーナスのやつ)(9冊)
- 内田樹。作品は色々(8冊)
- 野矢茂樹。作品は「語りえぬものを語る」が中心。(8冊)
- 夏目漱石。作品は「現代日本の開化」と「私の個人主義」(8冊)
丸山真男の「「である」ことと「する」こと」がトップ。わかりやすい二項対立があるので、レベルを問わずに使いやすいと判断されてるのかな?定番中の定番教材になっている。
2010年代の作品は全体の4分の1強
「現代文」というと「いつからが現代なの?」と生徒に聞かれた先生も少なくないのでは。僕の感覚だと「1990年代は最近、2000年代は新しい」になってしまうのだけど、生徒にとっても文句なく現代であろう2010年代の文章は、のべ97作品。約4分の1くらいです。もっとも新しいのは2015年。教科書作成スケジュール上、この辺がギリギリなのかな。
最も古いものは100年以上前の文章(講演)
逆に最も古いものは、夏目漱石の「現代日本の開化」で、これは1911年の講演。次に古いのも夏目漱石「私の個人主義」で1914年の講演。講演録だから読みやすいのもあるとはいえ、どちらも100年以上前のものだから漱石先生さすが…。
20世紀までの作品が全体の3分の1強
なお、20世紀(2000年まで)の作品は、133作品で、全体の3分の1強。もちろん現代にも通じる普遍性や素材文としての優位性があると判断されて選ばれているわけだけど、このあたりまでは「生徒が生まれる前の作品」ということは、教師は頭に入れる必要がある。
各自の責任でお使いください
というわけで、見るだけでも何か面白い発見があるかもしれないリスト。ご自由に、各自の責任でお使いください。そして、「間違いを発見したよ」「修正したデータをあげるよ」「載ってない教科書のデータを補充したよ」のお知らせをお待ちしております!
どれも思わず読みたくなりますね。
でも教師や学生じゃないとなかなか「教科書」って手にできないもの。(学校の保管室みたいなところにはうなるほど使ってない教科書が置いてあるのに)
学校の図書室や公立図書館などにも教科書コーナーがあれば、いいなと(ずっと)思っています。
そういうので一般の大人が読書会とかしてもいい。そうすると、例えば家庭の団らんやPTAなどの集まりでも少しは話題が「現実の教育」に関して広がったり深まったりしそう。
教科書コーナーは大学図書館にはあるのですが、学校図書館にはないですね。5月からしばらくの間、教科書見本を図書館に置くことにしましたが、本当はいつも学校図書館や公立図書館にあるといいのでしょうね。国語はアンソロジーとしては面白い読み物ですしね。