下記エントリに引き続きリフレクション関連の論文をにわか読み中なのだけど、看護や教育の世界ではリフレクションをするためのモデルが結構たくさんあるんだなあということに驚く。
Bolton(2014)のReflective Practiceという本で、たくさんあるリフレクションのモデルが3類型に分けられていたので、今日は備忘録代わりにそれをまとめてみたい。
ボルトンの分類では3種類
Bolton(2014)では、たくさんあるリフレクションのモデルを、次の3つに大別している。
(1)サイクル・スパイラル型 (Cycles and Spirals)
(2)質問リスト型 (Structured Questions)
(3)ステップ型 (Hierarchical and Transformative Models)
(1)サイクル型のモデル
(1)サイクル型はリフレクションのプロセスをサイクル図で表すタイプのモデルだ。おそらく最も有名なのがKolb(1984)の経験学習のモデルだと思う(ただ、原著ではコルブ自身はLewnion Modelと呼んでた. p21)。こんな図のやつです。
図の出典:リフレクションの研究家 中島のブログ
このモデルの他の例としては、Gibbs(1988)のリフレクティブ・モデルの他、Driscoll(1994)のWhat? So What? Now What?というモデルもこれに含まれるのかな。
このモデルの良い点は、リフレクションの初心者でもこの手順通りにフォローしやすくて実践的なこと。一方で、欠陥としてはその場の出来事や行動にばかり焦点が当たって、背景となる文脈や前提へのリフレクションが疎かになること(Bolton, 2014)や、現実のリフレクションはこんなに単純ではなく、サイクル状には進まないことなどが指摘されているようだ(Johns, 2009)。
(2)質問リスト型のモデル
(2)の質問リスト型は、要はこの視点で考えたり質問に答えていったりすると自然とリフレクションが深まるよ、という問いやヒントをずらっと提示したもの。例えばJohns(2009)のMSR(Models for Structured reflection)やStephenson(1994), などがこの例。Johns(2009)の場合には、こんな感じでずらっと並びます。
Models for Structured reflection(Bolton, 2014)
-Bring the mind home
-Focus on a description of an experience that seems significant in some way
-What issues are significant to pay attention to?
-How do I interpret the way people were feeling and why they felt that way?
-How was I feeling and what made me feel that way?
(以下、合計18個のチェックリスト)
これもまたサイクル型と同じで初心者にはフォローしやすい。それに、自分ではなかなか思いつかないような質問が含まれているのもいい。一方で、この質問に答えていくだけだと、質問リストに頼ってしまって、自律性を保てなくなってしまうという問題が指摘されている(Bolton,2014; F)。
(3)ステップ型のモデル
(3)の「ステップ型」(Hierarchical and Transformative Models)という翻訳は意訳に過ぎるかもしれない。これは(1)のような一本道のリフレクションのプロセスではなく、かといって(2)のような質問レシピでもない、リフレクションの深まりの段階をモデルにして示したもの。ここではDewey(1933)の5つのステップが示されていたけど、Hatton & Smith(1995)の4つのレベルのリフレクションも同じ仲間だと思う。
Hatton & Smith(1995)のリフレクションの4レベル
Descriptive Writing
振り返る出来事を叙述しただけ。リフレクションとは言えない。Descriptive Reflection
振り返る出来事における自分の感情や思考をそのまま書く。低い段階のリフレクション。Dialogic Reflection
振り返る出来事における自分の役割を明らかにし、疑問を提示したり、分析したり、他の出来事と関連付けたりする。Critical Reflection
振り返る出来事を、多角的な視点で分析する。より大きな社会的・文化的な背景を理解して、その出来事を文脈の中に位置づける。
こうした切り口は、経験を洞察深い視点で受けとめるためには役立つけど、一方で(1)や(2)のようなすぐに役立つ「レシピ」にはならない。リフレクションの初心者にとっては、これだけで効果的なリフレクションをするのは難しいかもしれない。
自分のリフレクションをどう「構築」するか
もちろんBolton(2014)のこの分類方法以外にも、リフレクションの分類方法は色々とあると思う。ただ、たくさんあるリフレクションのモデルをこういう視点で分類することで、それぞれのモデルにどんな特徴があるのか整理しやすくなるのはいいなと思った。
いずれにしても、どれか一つに頼りきりになってしまっては、リフレクション自体が目的化してしまう。自分のリフレクションのレベルを考えながら、これらのリフレクションの方法を意識的に組み合わせていくことで、自分なりのリフレクションの方法を構築していくのがいいのだろう。そのプロセス自体にも、より良いリフレクションをするためのヒントがあるように思う。
看護関連は、専門家であるお医者さんと患者さんをつなぐハブにならなければいけないようで、専門家的な側面ももちつつ協働的な側面も強く、マネージメント能力も必要とのこと。なので経験学習やインタラクショナルデザインなどを学ぶ必要があるようです。当初は、お医者さんと学校の先生は似た側面があると思っていましたが、一種、答えがあるお医者さんより、患者さんの顔を見て対応が必要な看護師さんのメタファーの方が近いように感じます。
そうですね。リフレクションは本当に看護関連の文献が多いですね(このエントリで紹介したものも看護関連です)。結局、一人一人への対応をどうするか、ということなのだなと思います。一方で、そのメタファーで語ると教科担当の教師は「100人以上の患者を一度に見る看護師」(小学校でも30-40人)なわけで、やはり人数的に色々な無理もありそうですが。