ライティング・ワークショップって結局何なの? (1)導入編

昨秋、定例の勉強会仲間に「結局ライティング・ワークショップの条件って何なんですかね、何をやればライティング・ワークショップなんですか」と聞かれた。その時には手短に答えたのだけど、自分にとってはなかなか大事な問いなので、今でもひっかかっている。自分の考えや知識の整理のために、このあと不定期連載の形でライティング・ワークショップについて書いておきたい。今日は導入編。

 まず前提として書いておくと、書くワークショップをすればその内容が何であれ「ライティング・ワークショップ(writing workshop)」と呼ぶことはもちろん可能だ(この意味では句会や歌会だってライティング・ワークショップ)。だけど、ここではそこまで広い意味では捉えずに、「1980年代以降、主にアメリカ、他にもイギリス、オーストラリアなど西洋圏中心に普及した作文教育の手法」としてのライティング・ワークショップを話題にしたい。ちなみに、ライターズ・ワークショップ(writer’s workshop)という表記もけっこう見る。

ライティング・ワークショップ提唱者はドナルド・グレイブスDonald Gravesとされている。グレイブスはアメリカの小学校の先生で、のちにニューハンプシャー大学で作文教育と教師教育に従事し、ナショナル・ライティング・プロジェクト(NWP)を牽引した人。下記エントリでグレイブスの動画を紹介しました。

 

作文を教える秘訣は、自分が書くこと。

2015.01.19


ライティング・ワークショップの実践者はたくさんいて、アメリカではメジャーな作文教育方法の一つだと言ってよいと思う。僕がこのブログで度々言及するナンシー・アトウェルは、その代表者の一人。

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ただ、日本語では翻訳されていないこともあってグレイブスやアトウェルの日本での知名度はいまいち。1990年代に紹介はされているけれど、あまり教育現場には影響を与えなかった。近年、日本の小中高でのライティング・ワークショップ実践例がちらほら登場しているが、その源泉になっているのは、おそらくラルフ・フレッチャー&ジョアン・ポータルピ、吉田新一郎・小坂敦子訳『ライティング・ワークショップ』(2007年)だろう。 僕自身も、訳者の吉田新一郎さんからこの実践を知った。吉田さんの翻訳と、この本の小学校での実践版とも言えるプロジェクト・ワークショップ『作家の時間』(2008年)が、今の日本においてライティング・ワークショップに関心のある人がまず手にとれる本のはず。





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だからまずは、この本に沿ってライティング・ワークショップの説明を試みてみたい。

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