創作の授業のおともに! 「4ページの物語」のブックリスト

今日はライティング・ワークショップなどの小説創作の授業で役立つような、2000字以下の物語が載っている本をご紹介します。2000字というのは、おおよそ文庫本で4ページ程度の短さ。短い時間ですぐ読め、そのぶん授業での使い勝手もいい。超のつく短編のブックリスト、ぜひ参考にしてみて下さい。

「2000字以下」で小説を書くライティング・ワークショップ

ぼくは自分のライティング・ワークショップでの創作作品の長さを、あえて「2000字以下」や「A4の用紙で2ページ以下」にしている。その理由は、以下に掲げるような、授業者としてのメリットにある。

  1. 僕が最終的に生徒作品を読んでコメントを書くときに、1作品平均15分〜20分で収めたいから。(放っておくと長大な作品を書く生徒が増えて仕事が増えて家庭が崩壊する)
  2. 生徒がお互い読みあうときに、一時間で何人かと読み合いができるようにしたいから。(上限の字数が決まっていると、読むペースがずれることも少ない)
  3. 授業中にカンファランスするときに、短い時間でざっと全体を読めるから。(作品が長いと、どうしても部分的に読んでカンファランスするだけになる)
  4. 作品集にまとめるときに、全員で一冊に収めたいから。(文字数が自由だと、作品集が作りにくくなる)
  5. 推敲をさせたいから。(長編を書くとそれで満足して推敲しない)

ご覧の通り、生徒の創作上の必要に基づいたものではなく、単に授業進行上の便宜的都合によるものなので、こうした制限が良いことなのかどうかは疑問もある。というのも、そもそも、2000字でショートストーリーを書くのは、おそらくもっと長い字数で小説を書くよりも難しいのだ。下手をすると、長編の設定を考えてあらすじだけを描いた作品になってしまう。

「2000字以下」の物語たち

そこで、「2000字以下でもこんなお話が書けるよ」と知らせる意味で、作家の書いた2000字以下の物語を毎回紹介している。このくらいの長さだと読むのに時間も取らないし、ミニ・レッスンで触れるにも使い勝手が良い。きっと他のライティング・ワークショップの授業や、読む授業でも使えると思って紹介する次第。

「ショートショート」といえば星新一

短いお話といえばショートショート。ショートショートといえば「神様」星新一。勤務校の中学生も星新一が大好きで、最後にオチの効いた星新一作品に影響を受けている作品の数も多い。

この星新一のショートショート全集には、1000編以上のショートショートが含まれている。多すぎで迷ってしまうが、僕はこの中から、生徒がイメージする星新一作品とはひと味違うテイストの星新一「愛の鍵」を紹介した。正確には2050文字くらいなのだけど、珍しい恋愛もの。

なお、特に字数制限にこだわらなければ、青い鳥文庫のシリーズがいい。傑作選でベスト盤として読める。

また、星新一が選者をつとめたショートショート・コンテストの優秀作品を集めた以下の本も、ショートショートの傑作揃いだ。

僕はこのシリーズの1作目にある、安土萌「海」がとても好き。2000字以下で、静謐で美しい世界を作っている。「海がくる」というタイトルで絵本化もされている。

日本のショートショートの書き手たち

「ショートショートの神様」星新一が有名すぎるけど、日本には他にもショートショートの書き手がいるし、その歴史もある。その辺は以下の本に詳しい。

色々な書き手がいる中で、星新一とは全く異なる独特の世界を作るのが江坂遊のショートショート。「最後にオチ」「SFチックな設定」だけじゃないんだ、と思わせる作風だ。

2000字以下という限定の中では、江坂遊「かげ草」の、全編に漂う不気味さがよかった。

都筑道夫も有名なショートショートの書き手。たくさんあって全然チェックしきれないのだけど、あすこま家にあるのは次の本。「いろは」順に2000字以下のお話が並んでいて、たいへんありがたい!ここから、ショートショートでは珍しい時代劇の都筑道夫「らんの花」を選ばせていただいた。

阿刀田高、田丸雅智といったショートショートの書き手が選者をつとめたアンソロジーもある。

「ショートショートの花束」シリーズからは、第8巻より戸口右亮「伊藤さん」。ほのぼのとした雰囲気が非常に僕好みの作品だ。また、田丸雅智がショートショートの傑作を選んだ次の本も、読み応えがある。ここからはたった600字のショートショート、岡崎弘明「自転する男」を紹介した。

他では、軽いノリのミステリ作品だと、蒼井上鷹『4ページミステリー』という本もある。このうちの蒼井上鷹「ロック・オン」は、生徒に教えてもらった作品だ。ちょっと後味が悪いので、生徒に紹介するかどうかは判断次第で。

こんな人も書いている! 有名作家の2000字以下の作品たち

川端康成

ショートショート作家として知られる人でなくても、2000字以下の作品を書いている作家は多い。有名どころでは文豪・川端康成の『掌の小説』。ここからは少年と少女の淡い恋を描いた川端康成「雨傘」をピックアップ。

夏目漱石

夏目漱石の『夢十夜』も、実はちょうど2000字程度の作品群である。ここからは一篇とるなら、やっぱり幻想的で美しい夏目漱石「夢十夜 第一夜」でしょう。

吉行淳之介

数々の名短編を書いている吉行淳之介。思春期を迎えた少女を描いた吉行淳之介「蠅」は、映像的な結末が謎めいて印象的な作品だ。筑摩書房の名著「高校生のための文章読本」に載っている。

原田宗典

個人的にはエッセイストという印象が強い原田宗典だが、日常の中に非日常が入り込む不気味さを描いた短編小説集『どこにもない短編集』も素晴らしい。この中から、原田宗典「ただ空いているだけの穴」「祖父のメンテナンス」は2000字以下で読める作品。

村上春樹

村上春樹の『村上朝日堂超短編小説 夜のくもざる』も、イラストも相まってユニークで楽しいショートストーリーだ。ここからは、村上春樹「天井裏」「夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について」の2作品を紹介した。「夜中の汽笛について…」は特に僕の好きな作品。

杉みき子

児童文学作家の杉みき子の作品も短いものが多い。子供の頃に大好きだった思い出の『小さな町の風景』から、杉みき子「あの坂をのぼれば」を紹介したのだけど、現代の子供たちはほとんど誰も知らなくて悲しい思いをしました…。海を見ようとする少年の心情の変化を鮮やかに描いた佳品です。

北野勇作

ユーモラスな作風で知られる北野勇作も、短編とショートショートを集めた「どうぶつ図鑑」シリーズを書いている。

この中でも、僕はユーモアたっぷりでのんびりした雰囲気の北野勇作「お猿電車」が好き。

道尾秀介、蜂飼耳…短編アンソロジーで出会った作品たち

いわゆる短編アンソロジー本を読んでいると、その中に時々2000字以下の作品も混じっている。

宮部みゆきと北村薫のこのシリーズからは、川上弘美「運命の恋人」蜂飼耳「ほたるいかに触る」を。どちらも、男子校生徒が想像する「ショートショート」の範囲外にある作品です。蜂飼耳は、同シリーズの次の本に収録されていた蜂飼耳「人間でないことがばれて出て行く女の置き手紙」も良かった。

アンソロジー『短編工場』からは、道尾秀介「ゆがんだ子供」を。この人の作品あまり読んだことがないので、こんな短いのも書いてるなんてびっくり。ホラー系の作品。

また、ちょっと古いけど、『幻想小説名作選』はとても読み応えのある傑作選だ。その中の生島治郎「暗い海暗い声」は、いかにもショートショートというどんでん返しが小気味いい作品。

海外作家の作品も! 2000字以下の作品たち

最後に、まだ全然開拓できていないながら、海外作家の翻訳作品もいくつか紹介しよう。O・ヘンリーやサキといった短編の名手の作品は、僕のすぐ手に入る範囲では、残念ながら2000字を超えるものばかりのようである。ただ、レイ・ブラッドベリの短編小説集『黒いカーニバル』には、短い作品が含まれている。レイ・ブラッドベリ「夜のセット」は、映画の撮影場所を舞台にした不思議なお話。

「ミニ・ミステリ100」シリーズからは、中巻からヘンリー・スレッサー「見覚えありませんか?」を。2000字を少し超えるのだけど、中学校の教科書にも載っているO・ヘンリーの「二十年後」(こちらはもっと長い)を思い起こさせる作品だ。

今のところ、僕が翻訳物で一番好きなのは、『Sudden Fiction 超短編小説70』に収められたマイケル・プレモンズ「クリスマス」だ。クリスマス用に子供達が売られる世界で、売れ残った子供達の悲哀を描いた作品。たったこれだけの短さなのに、長い長い小説が背後に隠れているよう。

ご存知の作品を教えてください!

ここまで、今学期の授業で開拓してきた「2000字以下」の物語を紹介してきた。授業中のミニレッスンの時間ですぐ読めて、いろいろな作風もある。そんな使い勝手の良い物語、今後もぜひ集めていきたいと思う。もし「こんなのあるよ」「これは基本!抜かしてはいかん!」という推薦図書がありましたら、ぜひ教えて下さい。お待ちしております。

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