問いをどう見つける? 探究型学習の「問いづくり」に役立つ本

今日は仲間内の勉強会だった。その帰り道、他校の先生と「探究型学習のテーマ探しをどう指導するかって難しいですよね」という話になった。このテーマ探し、「◯◯について」という形で済ませて先に進んでしまうと、問題がぼやけてしまって何をやりたいのかが本人にもわからなくなってしまう。その結果、「◯◯についてとにかく調べたけど、全体として何を言いたいのかはわからない」というレポートや発表になりかねない。論点をきちんと絞るためにも「◯◯について」では終わらせずに、問い(疑問文)の形で提示させることが大事になる。

今回のエントリは「探究型学習の問い探し」に役立つ本を4冊紹介してみたい。「論文の書き方指南本」に網を広げるとたくさんありすぎるので、あくまで「テーマ探し」「問い探し」に限定しよう

「問いづくり」を徹底サポート『問いをつくるスパイラル』

この「問い」の作り方について、まず紹介しないといけないのが、「問いを作るプロセス」にだけ徹底的にこだわった『問いをつくるスパイラル』(日本図書館協会)。何しろ一冊まるごと問いづくりの本である。類書がなかなかないと思うけど、図書館畑以外の国語教育関係の人には意外と知られていない本かも。

この本では、問いを作るプロセスを「問いを見つける」「育てる」「創る」の三段階に分けて、かつうまく進まずに困ったときの助言もある。

僕が思うこの本の良いところは、こんなところ。

  1. 問いを作る過程を「ステップ」ではなく「スパイラル」だとしている。
  2. すぐに使えるワークシートをたくさん例示している
  3. 「困ったときに開くページ」にかなり本質的なことが書いてある。

このうち、特に「困ったときに開くページ」は、「あるある」すぎて僕の一番好きなところ。そこで紹介されている

  1. とりあえず今できることをやってみる。問いはだんだんに形が見えてくるもの。
  2. 思いついたことはそのつど調べてみる。知っていることと知らないことを、知る。
  3. 頭で考えていないで書くことが大事。
  4. 自分の思いつきを誰かに聞いてもらうことが大事。

という4つのポイントは、自分が修士論文を書いていた経験を思い出しても「本当にそうだな」と実感する。とにかく同業の方には、まずはこの一冊をお勧めします。

「本物の迫力」、『はじめての論文作成術』

続いて紹介するのは、かつて探究型学習について集中して調べていた時に、僕が一番感銘を受けた本、宅間紘一『はじめての論文作成術 問うことは生きること』。

探究型学習全体のプロセスについての本だけど、副題「問うことは生きること」にあるように、第一部を丸ごと問いづくりに充てていて、問いづくりをとても重視している本だ。著者は探究型学習で有名な関西学院高等部で30年にわたって探究型学習を指導されていた方。豊富な実例に基づいた具体例の紹介が「本物の迫力」を感じさせる。

この本は「自己の関心を知る」ところから問い(この本では「テーマ」と呼んでいる)づくりを始め、カードを使いながらだんだん絞っていく過程が示されている。どれも読み応えがあるのだけど、特に「どんなテーマは研究テーマにならないのか」を書いている部分は、テーマの良し悪しを判断する一つの基準になる

読みやすい手引き『中学生・高校生のための探究学習スキルワーク』

次に紹介する本は、問い作りからはじまってプロセスを評価するところまで、探究学習のプロセスを、BIG6スキルズモデルにもとづいて示した本である。

この本はとにかく探究型学習のワークシートがたくさん。問いを探す段階でも、5W1Hマップ、マンダラート、KWLチャートなど、プロセスにそって、それぞれのワークシートがすぐに使えるように配列されている。個人的にはNDCを使って自分の発想を広げていく方法が一番好き。

僕個人は、基本的にはグラフィック・オーガナイザー(思考を助ける図)などのワークシート類があまり好きな人ではない(アトウェルの影響だと思う)ので、こういうワークシートを自分で使うことはあまりない。けれど、はじめて探究型学習を指導するにあたって何をすればいいかわからないという人にはうってつけといえるかも。

探究型学習のフロントランナー、『学びの技』

最後に、探究型学習のフロントランナーでもある玉川学園の授業「学びの技」のテキストを書籍化した『学びの技』。玉川学園はここのところ毎年訪問させていただいているのだけど、その都度授業が細かに改善されていて本当に驚く。探究型学習も先行事例に学びながら精度を上げている感じがあり、素晴らしい。

このテキストでは、5W1HやYes/Noなどの異なるタイプの問いを組み合わせて論題にぶつけることで、機械的に色々な問いを作ってみるアプローチをとっている。このやり方だと自分の発想では絶対に生まれてこない問いも生まれてくるので、行き詰まった時には異なる角度からの切り口を与えてくれるはずだ。

他でも、ここの実践は探究型学習とICTの活用という点でも参考になる点が多い。10月29日には「第5回探究型学習研究会」が開催予定なので、興味のある人は是非どうぞ。

第5回探究型学習研究会

http://www.tamagawa.jp/academy/lower_upper_d/news/detail_10861.html

ずっと終わらない問い探しのプロセス

問いはずっと書き手の中で育ち続け、変化し続ける。だから問い探しは終わらないし、間違っても「このワークシート1枚をやれば問いが見つかるよ」問いう方法は存在しないだろう。このエントリでは3つの異なる、それぞれに長所のある本を紹介してみた。結局は、ライティング・ワークショップの「作家ノート」のように、「毎日関心を持ってノートをとり続けること」や、以前に下記エントリで紹介した問いづくりの活動を(探究型学習の授業だけでなく)普段の授業内で続けることも大事なのだろう。

[読書]そのまま使えて教室を変える、良い意味でのノウハウ本。ダン・ロスティン、ルール・サンタナ「たった一つを変えるだけ クラスも教師も自立する『質問づくり』」

2016.05.31

とはいえ、探究型学習を担当して困っている方には、今回紹介した4冊はどれも参考になるはずである。是非どうぞ!

この記事のシェアはこちらからどうぞ!