後期がはじまって、もう1ヶ月。わりと日々いろんなことに追われているのだけど、持って生まれた性なのか、授業準備はけっこう楽しい。なかでも後期の個人的な大きなチャレンジが、将来、幼稚園教諭や保育士をめざす学生さんたちが取る「幼児と言葉」という科目だ。今日は、この授業の準備で僕が何を楽しんでいるのかについて書いてみる。
現場経験はないけど、楽しみな「幼児と言葉」
僕の勤務先は、いわゆる「研究大学」よりは、小学校や幼稚園の教諭、保育士を育てることを中心にしている大学なのだけど(ほんと、資格をとりたい人には充実したいい環境なので、近隣の高校の方、ぜひおいでください!)、いろんな教職系科目の中で僕にとって興味深いのが、この「幼児と言葉」だ。元保育士の先生とTTで持つ形とはいえ、保育の現場経験がまるでない自分が担当することには、正直、気後れもある。ただ、広い意味で言葉に関する授業なので、自分の専門性を広げる意味でもチャレンジしているところ。
この科目については、うれしいことも一つある。前任の三藤恭弘先生が物語創作指導の専門家だったこともあって、絵本の創作が授業の柱になっているのだ。小中高で物語の創作をやってきた僕にとっても、大学でもライティング・ワークショップができる!というわけで、とても楽しみな授業の1つでもあった。
実は、絵本をさっさと卒業した子どもでした…
とはいえ、実は僕自身は、絵本にそれほど親しんできたわけではない。幼い頃に読んだ絵本で覚えているのは、かこさとしさんの『どろぼうがっこう』くらい。文字を読むのが得意だったこともあって、小学校に上がる頃にはすっかり絵本を卒業してしまって、ポプラ社の伝記シリーズを読んでいた。そのせいか、当時の僕にとって絵本は、幼稚園の子や、本を読むのが苦手な小学校低学年の子たちが読むもの、というイメージだったと思う。
いま「当時は」なんて書いたけど、実は自分が親になってからも、それは変わらなかった。まだ子どもが0−2歳くらいの時に、発達段階を無視して新約聖書の絵本とか銀河鉄道の夜とか、明らかに年上向きの本を読み聞かせしていたし(神話や聖書は物語の基本なのでまず触れる価値があると考えていた)、子どもたちも両親に似たのか小学校にあがる頃には文字だけの本に移行していて、それを「やっぱり僕たちの子だなあ」と無邪気に喜んでいた。今思うと、なんと貧しい世界観かと笑っちゃうけど、実際はそんなものだったのである。
僕の絵本への見方が変わったのは、40代も過ぎて、軽井沢風越学園で勤務してからだ。風越のライブラリーには本当にたくさんの絵本があって、読み聞かせに習熟した保育者の同僚もいた。注文に応じていろいろな絵本を出してくれたり、探してくれたりする、心強い司書教諭の同僚もいた。そういう恵まれた環境で、僕ははじめて自分から絵本を手に取るようになった。絵本の絵の力強さや、子供たちを夢中になって惹きつける力にも気づいた。絵本を教室で読み聞かせたら、小学5・6年生たちも熱心に聞いてくれた。自分でもいろいろな絵本を楽しめるようになったのはあの頃からだと、ふりかえって思う。
絵本論を読みながら、授業をつくる
そんなふうに、遅まきながら親しんできた絵本。それを、この「幼児と言葉」の授業をきっかけに、グッと深められるのではないかという期待がある。福山に引っ越してから、退職された司書の方に絵本関連の本を譲っていただけたのも、とても幸運だった。その中にある絵本論を読んだり、古典的な絵本を眺めたりしながら、いま僕自身が絵本について学んでいるところだ。
勉強になる!藤本朝巳さんの絵本論
これまでに読んだ絵本論の中では、藤本朝巳さんの2冊の本がとても勉強になった。この2冊はおすすめです。
絵本は文字と絵が一体となった表現物であり、物語という時間芸術を、絵画という空間芸術の形に変換することで成り立っている。これが藤本さんの絵本論の基本スタンスだ。そのうえで、ページをめくることでお話が進むという、メディアとしての絵本の特徴を、絵本作家たちがどう生かして物語を語っているのか。具体的な作品に即して、丁寧に読み解いてくれる。
比較的新しい本では、矢野智司・佐々木美砂『絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか』も面白かった。文学作品における物語論を単に絵本に当てはめるスタンスに異論を唱え、絵本ならではの空間の使い方を2つのタイプに分けて論じている。ここがとても興味深かった。
こうした本で予習しながら、毎回、学生さんに感想や質問を書いてもらって、それに応答するためにまた予習して…を繰り返しながら、毎回の授業をくっている。こっちも感じだから、一緒に授業をつくっている感覚を、少しでも学生さんと分かち合えたらいいなと思っている。
「これこれ、これが見たかった」
もっとも、絵本づくりだけやっていればいい授業ではないので、本格的に絵本づくりに入ったのは、4回目の授業にしてようやくの話。先週、図書館に散らばって、思い思いに絵本を読みながら、自分の創作について考えている学生さんたち。その姿を見ていたら、「これこれ、これが見たかったんだ」という、懐かしさも混じったワクワクした気持ちが湧き起こってきた。
本格化したばかりの絵本づくりのフェーズ。どんな絵本をつくってくれるのか、今から楽しみです。

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