できたらいいな、「書き手の工房」。ライティング・ワークショップの教室を整備中…。

今日は仕事始め。風越学園ではまだ全員出勤日ではないけど、午後から学校に行って教室の環境を整えてきました。実は、先学期の末から、「作家の時間」「読書家の時間」で僕が使っている教室の環境を整えている最中なんです。今日はそれについてのエントリ。

「書き手の工房」を目指して

どうして教室の環境を整えているかというと、今の国語教室を「書きたくなる部屋」いわば「書き手の工房」にしてみたいから。僕が授業の拠点にしているのは、room00という、風越の中では普通教室に近いレイアウトや机・椅子の部屋。で、この部屋に来ると「いろんなアイデアが浮かんで書きたくなる」「困った時にいろんなところに助けがあって書きやすい」、そんな部屋にできたらいいなと思ったからです。

モデルは2つ。1つはナンシー・アトウェルの教室。『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』の第2章に書いてあるように、アトウェルは自分の教室をライティング・ワークショップのための部屋として、とても丁寧に整備しています。原稿用紙やパソコンはもちろん、手紙、ハサミ、ホチキス、ノリなど、授業を受けて文章をつくる作業に必要な様々なものを教室に用意しているわけ。

アトウェルと同じことをしている人が風越学園にもいます。それは図工担当のこぐまさん(岡部哲さん)。こぐまさんが長を務める「ラボ」は、子供たちがいつ来ても自分で必要なものを取り、片付けることができる、風越のものづくりの拠点です。何か思いついた時にすぐに作れるように、ほとんど全ての道具が手に取れるところにあって、入るだけでワクワクして何か作ってみたくなる、そんな空間になっています。

そんなアトウェルの教室やこぐまさんのラボのように、「この部屋に入ると書くことが楽しくなる」「書きたくなる」「書く助けになる」、そんな部屋を作れないかなと、ちょっとずつ教室を整備してきました。国語をTTで持っているざっきー(山﨑恭平さん)にも相談して、一緒に考えてもらったり、実際に棚を作ってもらったり…いろんな人の助けを借りて、教室の環境がだいぶ整ってきているところです。

3つの役割をもつ「作家コーナー」。

そんなわけで、教室の隅のエリアに、「作家コーナー」的な棚ができました!

置いてあるのは大きく分けて3つ。一つは文具系。はさみ、セロテープ、のり、付箋、レター用紙に封筒、鉛筆や消しゴムなどの定番のほか、イヤーマフやついたてなど、集中したい時に使うものもあります。

もう一つが書くときに使える資料。例えば原稿用紙の使い方やキーボードの打ち方を書いた紙、接続語の一覧表、それから表現のために使う類語辞典や表現辞典など、文章を書くときのお役立ち知識をサポートするものですね。過去の作品集も一部はこちらに。

そして3つ目が、創作のアイディア出しを助けてくれるツールキット系。例えば、中井悠加先生に教わった「おしゃべりなモノ」という詩の創作のワークシート。田丸雅智さんの超ショートショート作りのワークシート。それからキャラクターの設定シートなど、主にアイディア出しの必要なものもまとめました。カードゲームの57577やショートショートnote 、カタルタなどもここの仲間です。

雰囲気のある「工房」を作りたいなあ…

「書き手の工房」は、創作の時に使う便利なものがあるだけじゃなくて、「この部屋に来ると書きたくなる」雰囲気があるといいなぁとも願っています。ライティング・ワークショップの「ワークショップ」って、工房ってことだものね。書き手が集まる工房が理想的なイメージです。そういえば、本物の作家の岡田淳さん(小学校の図工教師)が、自分の図工準備室の理想イメージを「不思議に満ちた雑然」(p229)と名付けてて感嘆したけど、そういう核になるイメージや世界観を部屋で表現して、子どもたちの無意識に伝わるといいなあって思います。

というわけで、雰囲気づくりのために、今日は、作家の時間の定例イベント「書き出し選手権」のここ3年間の優勝作品を窓に貼ってみました。どうだろう、ちょっと雰囲気が出たかな? 作家ノートなんかも教室の中に「作品」として飾りたいところ。

ところで最後に。こういう環境整備にあたって「必要なものを子どもに聞く」人もいると思います。あるいはゴリさんのように教室リフォームを一緒にするとか。まあ、それもいいけど、でも僕はそのタイプじゃないな。きっとアトウェルもこぐまさんも、いきなり子どものニーズを聞いたりなんてしてないと思います。だって、この部屋の整備を通して実現したいのは、子どもを「書きたい」気持ちにさせること。いわば、子どものニーズを聞きたいんじゃなくて、ニーズをつくりたいわけだから、まずは自分でイメージと世界観をしっかり用意して伝えて、そのあとで「書き手」である子どもたちの声を聞いて調整するつるり。少しずつ育っていくといいな、と思ってます。

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