今日は思いっきり宣伝です! 岩波書店の中学生向けレーベル「岩波ジュニアスタートブックス」の一冊として、『君の物語が君らしく 自分をつくるライティング入門』を出版します。発売は4月23日。タイトル通り、中高生を主な想定読者にした「書くこと」の入門書です。軽井沢風越学園での授業経験をベースに書きました。ぜひ読んでください!
目次
『君の物語が君らしく』って、どんな本なの?
ひとことで言うと、書くことの魅力を伝えたいと思って書いた本です。書くことの入門書にも色々なスタンスがありますが、この本は、「うまい文章を書く方法が載っている本」ではありません(そういう本はすでにたくさん出ており、本書の巻末でも少し紹介しています)。その代わりに僕が目指したのは、「書くってどういうこと?」という問いに答えることでした。その問いに答えるため、「他者」との関係性をひとつの切り口にして、僕の考える書くことの価値と魅力を書いています。
ベースは軽井沢風越学園での「作家の時間」
このブログの読者にはご存知の方も多いでしょうが、僕はライティング・ワークショップのという作文指導の実践家であり、「コミュニケーションの手段」よりは「発見の手段」としての書くことを重視しています。僕のその立場は本書でも色濃く出ており、とりわけ、軽井沢風越学園に移籍してからの「作家の時間」を通して考えたことをベースに、本書は書かれています。そのため、風越学園で僕が受け持った子たちが書いた文章やノートも、本書にはいくつも収録されています。タイトルの『君の物語が君らしく』も、ある小6の女子児童が「作家の時間」作品集につけたタイトルを、許可をとって本書のタイトルにさせてもらいました。その意味で、本書は、風越学園での4年間の実践がなければ書けない本でした。軽井沢風越学園ではどんな国語の授業が展開されているのか、興味がある方は、その一端が本書からのぞけると思います。
作文指導者としての僕を作ってくれた言葉たち
本書のもう一つの特色が、僕がこれまで出会ってきた「書くこと」についての先人たちの言葉も掲載しているということです。最初の一つだけ、ここにも紹介しましょう。
下手な文章の根っこには、たいてい不安がある。自分の楽しみのために書くなら、不安を覚えることはあまりない。
スティーヴン・キング『書くことについて』170頁
僕はこれまでずっと、「書くこと」や「読むこと」についてのこのような言葉を、読んだ文献からその都度収集してきました。こういう琴線に触れる言葉の理解を、実践を通して深めていったことが、作文指導者としての僕を作ってくれたように思います。そこで本書でも、古いものからごく最近のものまで、合計で10個以上の「書くこと」についての先人の言葉を、すべて出典と引用ページつきで紹介することにしました。引用元は大人向けの本が多く、中高生の読書の世界がそこから広がること以上に、大人の、とりわけ書くことの指導的立場にある方に、原典を読んでもらえることを期待しています。
これまでに関わった主な本たちとの関係は?
僕は、2018年に、僕のライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップの師匠とも言うべきナンシー・アトウェルの主著、『イン・ザ・ミドル ナンシー・アトウェルの教室』(小坂敦子さん、吉田新一郎さんとの共訳)を翻訳しました。やはり、この本が実践家としての僕の出発点です。
その後、筑駒でリーディング・ワークショップを展開する中で抱いた課題意識を形にしたのが、森大徳さん・仲島ひとみさんとの共編著『中高生のための文章読本』でした。
「中ため」がリーディング・ワークショップから生まれた本だとしたら、今回の『君の物語は君らしく』は、風越学園でのライティング・ワークショップ(作家の時間)から生まれた本です。僕は、ライティング・ワークショップについて『増補版 作家の時間』の一章で書かせてもらっていますが、あれはあくまで筑駒時代の授業をベースに、中高でライティング・ワークショップをやるときの一般的な留意点を書いたものにすぎませんでした。
というわけで今回、風越学園での実践の一端を、ようやく出版という形で公にできたことを嬉しく思っています。僕のブログを継続して読んでくださっている方には、「書き手の権利」などおなじみの話題も多いのですが、断片的なウェブのブログではなく、一冊の本として読んでいただけると嬉しいです!