登山、歴史、新田次郎がキーワード。雑多に興味あるものを読んだ、2023年8月の読書。

ここのところ、心身ともに低空飛行が続いている。ブログの更新が滞っているのもそのせい。平日、学校で疲れ切っちゃうせいかな?と思うが、休日にもやることに追われて、気力もイマイチ。まあ、そんな日もあるか。日曜日の今日は午前5時から浅間山の第一外輪山(黒斑山、蛇骨岳、仙人岳、鋸岳)に登り、午前中のうちに帰宅して午後はエコール御代田の「あさま寄席」へ。登山と落語で気分転換。この効果で元気が戻ってくるといいな。さて、そんなわけで9月ももう10日になってしまったけど、今さら、8月の読書記録です。

目次

この夏は家族で甲府へ。武田信玄をめぐる本。

我が家の夏の旅行はいつも近距離国内。今年は甲府でした。というのも、5月に長野県坂城市のバラフェスティバルに行った折、ご当地ヒーロー「村上義清」が大々的にプッシュされているのが気になってしまって…。戦国好きでもないと知らない名前だと思うけど、若い頃の武田晴信(信玄)を二度も破った、戦国時代の信濃国の実力者なんですね。それ以降、なんとなく村上義清が気になる存在になり、虚空蔵山城や砥石城をはじめとする、彼が築いた山城群(村上連珠砦)を歩いたり、最終的には彼を越後に追いやる武田信玄の信濃平定の歴史を本で読んだりと、この数ヶ月、プチ武田家ブームだったわけです。その集大成に甲府の躑躅ヶ崎館跡(現・武田神社)や、信玄の子・勝頼が築いた新府城などを訪ね歩いてきたわけ。

自然、8月は武田関連の本を読むことになった。武田家というと、色々なところで名前が出てくる平山優さんの本は、武田神社発行の『新編・武田二十四将正伝』から勝頼の代の平山優『武田氏滅亡』まで。新田次郎の小説『武田信玄』も面白かった。1987年初版の、中井貴一主演の大河ドラマの原作本というから、実際昔の本ではあるが、古風な雰囲気を漂わせる一代英雄記だ。

また、武田氏の本ではないが、中嶋豊『いざ登る信濃の山城』は、戦国について調べながら山城跡を歩くのにうってつけの一冊だ。

今月は登山本も多かった!

この夏のもう一つのブーム?が「テント泊」。テントを背負って山に一泊。今年こそはやろうと思って、ついに薬師岳に登ったのが8月中旬のこと。栗山祐哉『はじめてのテント山行』はテント泊前の準備にとても役立った本だし、薬師岳の登山口で愛知大学の遭難碑を見つけてからは、遭難も気になって羽根田治『十大事故から読み解く山岳遭難の傷痕』も読んだ。

特に後者は素晴らしい本だ。加藤文太郎がニアミスした剱沢小屋の雪崩事故、愛知大学山岳部の雪山遭難事故、前穂東壁のナイロンザイル切断事故、谷川岳の宙吊り死体の回収、トムラウシ山のツアー登山遭難、木曽駒ヶ岳の学校集団登山事故、松本深志高校の西穂独標の学校登山落雷事故など、有名な山岳遭難事件を取材して今に活かす教訓を探っている。

特に個人的に気になったのは学校登山の話題。天候が急変することもあり、かつ大人数のため行動も遅くなりがちな山は、学年の生徒全員で登ろうとするとどうしようもなくリスクがつきまとう。そのことをあらためて思い知らされた。学校登山は長野県でもコロナをきっかけに下火になりつつあるが、やはり大人数での登山は、個人的にはあまり賛成できない。

今月のベストは、新田次郎『聖職の碑』

そんな中、今月のベスト1は、新田次郎『聖職の碑(いしぶみ)』。大正2年に起きた、木曽駒ヶ岳での中箕輪尋常高等小学校の修学旅行での遭難事件を題材にした山岳小説だ。この遭難事故、顧問や生徒も含めてなんと合計で11名の死者を出した大惨事である。そしてさすが新田次郎、生徒や学校OBたちが次々と死んでいく様子の描写が凄まじく、ページをめくる手が止まらない。背景として、この時期の信濃教育会の実践主義的教育に対抗する、白樺派理想主義教育の台頭も描かれており、この時期の教育の雰囲気も伝わってくる小説だったのも、また一段と興味深いところだった。

とまあ、遭難の本で著者が新田次郎と、なんだか8月の読書傾向が詰まったような1冊だった。

お仕事系読書は…

8月はお仕事系の読書はあまりしていない。すでにブログにも書いた授業づくりネットワーク誌佐伯胖『「わかる」ということの意味』以外で良かったのは、ロイ・ピーター・クラーク『名著から学ぶ創作入門』だった。作家を中心に、これまでの文章創作法の本をまとめた本。例えばドナルド・グレイヴスが書くプロセスについて語っていたりなど、いろいろな書くことについてのアイディアや例文に出会える。ライティング・ワークショップのような創作プロセスを扱った授業をしている人は、読んで得るものが多いはずの一冊。

あとは、これも仕事系と言っていいのかな、横浜市歴史博物館『おにぎりの文化史』も良かった。一学期のテーマプロジェクトのテーマが「おにぎり」なのでなんとなく気になって手に取った一冊なのだけど、おにぎりかおむすびかという呼び方の問題、各地のふるさとおにぎり、そして最古のおにぎりと言われる化石や古代のご飯の炊飯方法まで、おにぎりについて様々なことが書いてあって面白い。全ページカラーで、見るだけで楽しめる一冊だ。

なんだかこうやってみると、自分の興味に惹きつけた雑多なジャンルの本が多かった8月の読書。9月は、8月22日の新学期突入からここまでちょっと読書する元気もなくてほとんど読めてないのだけど、ここから少しは巻き返していけるといいなあ。

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