宿題に効果はあるの?ないの? 研究結果を簡単にまとめると…

ちょっと前に、ある方に「宿題についてはどうお考えですか?」と聞かれて話したことを、ここにもメモしておく。と言っても、僕自身は宿題についてはほとんど詳しくない。だからこのエントリは、根拠となる次の本の簡単なまとめである。

最近流行?の宿題無意味論

最近は麹町中学校の工藤校長が宿題や定期テストを廃止したことが話題になっている。

なぜ宿題は「無駄」なのか?――“当たり前”を見直した公立中学校長の挑戦

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1905/08/news022.html

とはいえ、こういう論はタイトルの煽りも多くて、見出しに踊らされないようにしたい。上記エントリでも、結局工藤校長が冒頭で言っているのは、「必要ない子には宿題はいらない」という当たり前のことである。その後も、宿題を出すことが自己目的化していたり、評価の材料として使われていたりという実態を指摘しているが、それもつまり「適切でない宿題は適切でない」というだけの話。「宿題の出し方には工夫が必要である」(適切でない宿題は課すべきでない)ことと「宿題そのものに意義があるかどうか」は全く別の問題である。

とは言え、こういう「自己目的化した宿題」が多いだろうことは、子どもが学齢期の僕にも容易に想像がつく。工藤校長の論は、「そういう宿題はやめよう」ということなのだろう。

また、三重県高田高校の放送部生徒がこの工藤校長とサイボウズの青野社長にインタビューに行った動画も最近話題になったけれど、これについては「なぜそもそも否定しそうな人のところにしかインタビューに行かないのか…」という印象が拭えなかった。取材としては片手落ちというか、期待する結論ありきというか、せめて専門的な知識のある学者さんのところに行くべきだったのでは…と思う。

「宿題」を通して見えたもの(高田高等学校)

https://www.nhk.or.jp/event/n-con/hs/tv_doc.html

 

宿題の効果についての研究

さて、「専門的な知識のある学者さん」の説で言えば、宿題の効果については、クーパーという研究者のメタ分析が有名だ。下記の本でのハッティの分析も、基本的にはクーパーの研究に基づいている。

そこでの主張を僕なりにまとめてみると、以下のようなものだ。

  1. 宿題の効果は、年齢の低い学習者より高い学習者の方が高い。クーパーの主張では、中学生は小学生の2倍、高校生は中学生の2倍の効果がある。
  2. 宿題の効果は、能力の低い学習者よりも高い学習者の方が高い。(年齢の違いもこの影響である可能性が高い)
  3. 自力で学べず、学校の勉強についていけない学習者にとっては、宿題は動機付けを低減させ、誤った学習行動を定着させ、効果的でない学習習慣を身につけることに繋がりうる。
  4. 学習内容がタスク志向で複雑でない場合の方が宿題の効果は高い。高次の概念的思考を必要とする宿題や、プロジェクト・ベースの宿題の効果は低い。
  5. 宿題を出すことが時間管理能力を高めるというエビデンスはない。
  6. 丁寧なチェックなど、学校で教師に見守られる機会を設けることで、宿題の効果は高まる。

簡単に言えば、宿題の効果は年齢が上がるにつれて(=学習能力が高まるにつれて)高まり、宿題の性質がタスク志向で単純なものほど効果が高い、ということだ。これは、深い学習になればなるほど教師からの適切なフィードバックが重要になるからだろう。逆に言うと、暗記・練習・繰り返しを主眼とした「浅い」宿題であれば、高校生くらいになれば効果が高いのである。

クーパーの分析には、もちろん異論もある。俗に言う「10分ルール」(1年生なら10分、2年生なら20分…というふうに、学年×10分の宿題が適切とする立場)を支持する研究者もいる。しかし、下記の記事を読む限り、小学校の早い段階での宿題の効果については、懐疑的な研究者が多いようだ。

Is Homework Good for Kids? Here’s What the Research Says

https://time.com/4466390/homework-debate-research/

メタ分析を始めとする研究は、あくまで全体の傾向を語るだけで個別の宿題の良し悪しは言えない。しかし、この傾向に素直に従えば、よほど個別に特別な文脈を設定しない限り、小学校段階での宿題にはあまり効果がない可能性が高そうだ。とりわけ、小学生にプロジェクト・ベースの宿題を、教師の助けもなくやらせる宿題、つまり「夏休みの自由研究」は、宿題としては相当まずい可能性がある。また、成績が悪い子に宿題を出すのもおそらく効果が低い。成績が悪い子は、学習能力が低かったり学習管理ができないから悪いのであって、それを必要とする宿題を出すのはナンセンスなばかりか、モチベーションを考えたら逆効果だろう。逆に、工藤校長に「宿題ってなんの役にも立たない」と言われた三重県高田高校放送部のみなさんは、知識の暗記ベースの宿題はちゃんとやった方が学力形成には繋がりそう。

とまあ、宿題の効果を云々するのも、年齢や学力や宿題の性質など、色々な要素を総合的に考える必要がある。さて、軽井沢風越学園では、宿題はどうなるんでしょう…?

 

 

 

この記事のシェアはこちらからどうぞ!