司書さんに「中学1年生はとにかくこれを読みます」と言われて借りた本の一冊。実際、この本を小学生・中学校低学年時代に読む生徒は少なくないようだ。借りた本を仕事机の上に置いておくと、何人かの高校生が「おお、懐かしい」と言っていた。
「男の子」要素満載の楽しい読み物
主人公は内藤内人と竜王創也という二人の少年。物語は、内人が創也の挑戦に見事応えて「仲間」として認定され、『ルージュ・レーブ』というゲームの開発者である栗井栄太に出会うための冒険に出る。また、同時にクラスメートの美晴の依頼でクイズ番組にも出ることになったところ、ある事件に巻き込まれ…というストーリー。
読んでみるとたしかに「男の子」ウケが良さそうな要素が満載の小説だった。ゲーム、謎、コンピュータや様々なテクノロジー、下水道の冒険、爆発、クイズ番組の出演、そこでの事件とその解決…。一応はヒロイン?役の美晴がかなり図々しい性格なのも、このお話をユーモラスで楽しいものにしている。
また、この2人の取り合わせも良い。竜王創也はお金持ちの御曹司でかつ成績優秀という、尖りきったキャラ設定なのだけど、一見普通の少年っぽい内人の方が、サバイバル能力に長けていて、密かなスーパー中学生。面白いことに、創也の方が内人を頼りにしている節がある。
なるほど、現代のトム・ソーヤ
なるほど、現代のトム・ソーヤだなあと思う。ぼくはこの本を読みながら、自分が小学生の頃に読んでいた、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズやら、那須正幹のズッコケ3人組シリーズやらを思い出していた。あれらにも、たしかにこんな要素が満載だったのだ。ズッコケシリーズはまだしも、今の小・中学生で少年探偵団シリーズを読む子はかなり少なくなってしまったけど、根っこは同じ。もしぼくが今の小学生なら、やっぱり「都会のトム&ソーヤ」シリーズを読んでいただろう。そんな思いで胸が満たされて、懐かしい感じの読書だった。
子供達と一緒に読んでみようかな
この本の最初に、著者のはやみねかおるさんが次のような言葉を寄せている。
もし、トム・ソーヤになりたかったら、きみのまわりを見わたしてごらん。
そうすれば、いろんなものが見えてくる。
そして気がつくはずだ。
ぼくたちは、いつだってトム・ソーヤだってことに。
本当にそうなんだろうなと思う。僕が読んでいたのを見て、我が家の娘や息子も、このシリーズを読み始めている。娘の方はクラスメートも読んでいるそうだ。せっかくなので、一巻だけでなく他の巻にも手を伸ばしてみようかな。