僕のいる学科(MSc Educational Research)は教育研究で博士号を取る4年コースの1年目でもあり、僕と違って博士号取得まで目的にする学生さんが多い。だから先生も折に触れて先を見据えた研究の話を雑談まじりにする。今日の授業でとても印象に残った雑談があったので、忘れないうちに書いておこう。それは、Ph.D.(博士号)をとるとはどういうことか、という話だ。
「Ph.D.を取る」という旅
Ph.D.を取るというのは、旅(ジャーニー)だよ。世界でたった一人の独立した研究者になるための旅だ。
と、その先生は言った。
あなたはとても小さな、本当に小さな問いを一つ選ぶ。そしてその問いについて、世界中の誰よりもよく考える。その問いに関連した文献を世界の誰よりも読む。誰よりもよく考えて、誰よりもよく知っている。そして、そこから新たな発見をする。それで、あなたはその問いについて世界で一番重要な人物になる。これが、あなたがエキスパートになるということなんだ。人類の知識(knowledge)に、あなただけにしかできない貢献をする。それはとてもハードな旅だ。だからこそ楽しいんだ。そうじゃないかい?
おおよそこんなことを言ったと思う。教室は(よくしゃべるアラブの学生も含めて!)シーンと静かになって聞いていたし、博士に進学しない僕にとっても、印象深い話だった。
人類の知識に、ほんのすこし、貢献する
この話で思い出したのは、いつか下記のウェブサイトで見た、この絵だ。
人類の持つ知識を、ほんのすこしだけ、出っぱらせる。とても小さな、でも他の誰にもできない、確かな貢献。単純に、かっこいいなあ、と思ってしまう。
日本の場合、一方では博士号取得者が就職先に恵まれないという深刻な問題もあるし、僕個人で言えばこの後さらに博士課程に進むのは現実的には厳しそうなのだけど、でも、研究するっていいなあと思わされた。なにしろ周囲はほとんど博士課程に進む人たちだし、先生は気軽に「博士課程においでよ」と誘うしで、どうしても後ろ髪を引かれちゃうな。
その思いを胸にしまって、あと半年、頑張ろう!