小山田浩子「穴」を読了。掲載作品は芥川賞を受賞した表題作「穴」、「いたちなく」、そしてその続編とも言える「ゆきの宿」の三作。
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どれも田舎を舞台にした夫婦の話。日常生活の中に潜む狂気や恐怖を扱うタイプの作品で、好みとしてはわりと好き。個人的には、表題作の「穴」よりもたった20ページほどの「いたちなく」という作品が印象深い。特にラストシーンの主人公の奥さんのうっすらとした悪意を感じさせる終わり方が不気味で良い。不妊に悩む妻の、友人夫婦に対する、抑制されているだけに底知れない悪意をうかがわせる作品だ。結末の一行が何を意味しているのかは、一読しただけではよくわからなかったけれど、確かにそこに何かを感じさせる。
それにしても、狭い世界を描いているせいか、空気が薄くなった夏のような、じっとりした息苦しさを感じさせる。淡々とした日常の語りの中に謎が仕掛けられ、それが解かれないままに終わるので、もう一度読み返したくなる作品でもある。