ライティング・ワークショップ、今回はカンファランスを頑張りました。

ライティング・ワークショップは提出前の授業がすべて終了。後は生徒たちが締め切りに向けて頑張るだけ。すでに終わってる子ももちろんいるけど、もう一踏ん張りの生徒も多いし、進んでなくて気になる生徒たちも何人もいる。

今回のライティング・ワークショップの個人的テーマは「カンファランス」だったので、それについて忘れないうちに書いておきたい。ちなみに、ちょうど一年前にもやはりカンファランスについて書いているので、そこと比較してみると、この一年での違いが見えるかも…。

どうする? 難しい40人学級のカンファランス

2017.02.17

目次

今回の個人的テーマはカンファランス

「カンファランス・アプローチ」とも言われるライティング・ワークショップ。しかし、何度も書いているように、40人学級の僕の学校では、このカンファランスがとても難しい

それでも今学期は、下記エントリのアトウェルの姿勢を念頭に置いて、「できるだけ多くの生徒と話をする」「適切なタイミングで、適切な知識を教える」「教えることをためらわない」ことを心がけた。30分間の「書く時間」でどれだけ生徒の様子を把握して、適切なタイミングで適切な支援をするかが教師の踏ん張りどころだ。

アトウェルのライティング/リーディング・ワークショップの真髄は、カンファランスの凄み。

2017.12.30

カンファランスの基本的なやり方

僕の今回のカンファランス(前後の作業を含む)のやり方は、以下のようなもの。

  1. 前の授業終了後、次の授業までに生徒が書いた大福帳を読み、生徒の進捗や課題を把握する。
  2. 一言のコメントで済むようなら、大福帳に直接書いて簡易的にカンファランスする。
  3. 本人と直接話をする方が良さそうであれば、その生徒と次の時間にカンファランスする
  4. カンファランス予定者はスプレッドシートにメモ。 だいたい7〜10人ぐらい。
  5. その他の生徒たちの進捗状況も、大福帳からスプレッドシートに転記する。
  6. 次の授業の書く時間では、カンファランス予定者を優先してカンファランスする。
  7. 予定者が終わったら、最近話を聞いていない生徒を中心にカンファランスする。
  8. カンファランスで得た生徒の情報や自分の助言などは、手元の iPad miniでスプレッドシートに★付きでメモする。
  9. 授業終了時に大福帳で進捗報告を書いてもらう
  10. 授業が終わったら大福帳を読んで…(最初に戻る)

カンファランスの流れ

このやり方は、ここ数年間で徐々に定着してきたもの。まず、毎回の記録に大福帳を使うようになったのは2014年度から(下記エントリ)。これで状況を前より把握できるようになったのが大きい。

作文の授業に大活躍、大福帳!

2015.02.13
去年も、大福帳を事前に見てiPadminiを持ってカンファランスしていた。ただ、この時はスプレッドシートを使わず、大福帳をそのままスキャンして、見ながらカンファランスしていた。

どうする? 難しい40人学級のカンファランス

2017.02.17

毎回誰とカンファランスしたかをスプレッドシートに記録するようになったのは、今年度のリーディング・ワークショップから(下記エントリ)。この方が、前回や前々回誰とカンファランスしたかまで一覧表形式でわかるのが良いね。多くの生徒と話をしようという気にもなるし、生徒のプロセスを把握できる。

試行錯誤中、リーディング・ワークショップのカンファランス。

2017.05.26
こんな風に、昨年と違い、今学期はできるだけ多くの生徒に目を配ることを心がけた。大福帳の内容をまめにスプレッドシートに転記して生徒の進捗状況を把握できるようにしたし、書く時間だけでなく、授業前後にも積極的に生徒に声をかけて状況把握に勤めた。

カンファランスをメモするスプレッドシートはこんな感じ。本当にただの表です。写真はぼかしてあるので見えないけど、カンファランスをした生徒とのやりとりには★マークがついている。★マークの数はカウントされるので、その日の授業で何人と話したかすぐに確認できるというわけ。

結果、どのクラスでもだいたい15人くらいの生徒と話すことができた。今までは10人が精一杯だったから、だいぶ早くなったかな。この点は成長したと思う。

小さなことだけど、カンファランスで使うiPad miniをフリック入力の設定に変更すると、入力が速くなって感激した。もっと早くやっとけばよかった。おすすめです。

カンファランスで聞いていたこと

すでに書いたように、今回のカンファランスは「教えること」をためらわないように心がけた。生徒に「どんな感じ?」「何か困っていることある?」と聞いて、全体の構成から文末表現にいたるまで、問題があればその解決を手伝うか、もしくは解決につながる本を紹介した。授業見学者の方に「あすこまさんが話す時間が長いですね」「誘導にならないように心がけていることはありますか」と言われたくらいなので、ティーチングだと思われていたたはず。

ただ、僕はこれはこれでいいというか、「カンファランス・アプローチってそういうもの」と考えている。だって、アトウェルやカール・アンダーセンたちアメリカのライティング・ワークショップ実践者は、カンファランスを「生徒から情報を引き出して、それに応じて必要なことを教える時間」と捉えているのだから。

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2017.12.30

名人教師からカンファランスのやり方を学ぶ

2015.04.04
そして、僕自身も、教えられることはきちんと教えた方が良いと思っている。カンファランスでの教師は「ただの聞き手役・引き出し役・励まし役」ではいけない、というのが現時点での僕の立場だ。だから、実感としては「ようやく少しカンファランスできるようになってきた、自分の持つ知識を生徒の文脈の中で手渡せるようになってきた」という感じに近いかな。

「作者の権利10か条」とどう向き合うか?

一方で、僕は「作者の権利10か条」も大事にしたいので、どこまで生徒に自己開示を迫るかは、かなり迷った。迷った結果、今回は、カンファランスの時に「見せてもらってもいい?」と生徒に聞いて、OKをもらえた生徒のみ、本文を読んで助言をしている。

これは素敵&大事!「作者の権利」10か条

2016.05.29
実際のところ、この時に「いや、ちょっと…」と断る生徒は少なくない。こうやってちゃんと断れること自体は良いと思うのだけど、僕としては、「見せてくれればもっと具体的に何か言えるかもしれないのに…」という残念さはある。けれど相手の意思を尊重して、そういう生徒にはざっと概要を話してもらうなど、できる範囲で情報を提供してもらい、それについてカンファランスする形にした。

こういうやり方は、おそらく生徒の安心感の醸成には効果的だっただろうけど、「もっと教えられるのに…」という思いも、正直言って残った。でもまあ、この程度がいいんだろうな。やはり「作者の権利」は大事にしたいし。

やはり40人学級の限界が…

と、まあ、カンファランスに力を入れていた今回のライティング・ワークショップ。会話をする人数が増えただけでなく、中身も濃くなったし、プロセスで把握できる生徒の数も増えた。自分なりに、成長した実感がある。

一方、40人学級(×4クラス)の壁は依然として高い。どうしてもフォローできない生徒が出てくるのだ。 合計160人超の生徒の大福帳を毎回読んで、コメントをして、その進捗をスプレッドシートに転記するのも、なかなかにしんどい。これが半分の20人学級だったらいいのになぁというのが本音。

教師の個別カンファランスでできるのは、物理的にここまでかなあ、という気もする。あとは生徒同士のピア・カンファランスが起きるような仕掛けを、どんな風に盛り込んでいくのか、というところなのかも。日本の教室環境でライティング・ワークショップをやるのは、なかなか大変なことなんだなあ…。

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