[読書] 個別読書の研究についての基礎資料!Gambrell, et al. (2011) The Importance of Independent Reading

読みの研究を専門にしている先生から、これは読んでおいた方がいいですよとおすすめされたのが、次の本。読みの研究の基礎文献だそうだ。

ただ、英語の本をがっつり読むのは今の僕にはとてもできそうにない。とりあえず、一番関わりの深そうな第6章 The Importance of Independent Readingという章だけ目を通した。そしたらまさに、個別読書(Independent Reading)についての基礎文献。個別読書の歴史から、その効果をめぐる研究史、そして研究に基づいた効果的な方法まで、短い中にぎゅっと詰まっていた。

そもそもIndependent Readingって?

このブログでも特に定義をしっかりしないで使ってきたが、Independent Reading(IR)とは、「自分で選んだ本を静かに読んですごす時間」のことを指す。僕は「個別読書」「個別自由読書」と訳している。(日本での定訳は何だろう?)

要は「単に読むだけ」なのだが、「読む時間が読みの成績に好影響を及ぼす」ことは、多くの研究で指摘されてきている。単に相関があるというだけでなく、実験デザインの研究(experimental study)や半実験デザインの研究(quasi-experimental study)でも同様だ。代表的な研究であるCunnningham and Stanovich(1991)は、小学校4〜6年生を対象に、文章に接している量が語彙や流暢さや書き取りの能力と相関のあることを示した。誰もが読書から好影響を受け、しかも読むのが苦手な学習者のほうが、より大きな利益を得るのだそうだ。

個別読書の効果をめぐる研究史

この個別読書の効果をめぐっては、1970年代にSSR(Sustained Silent Reading)という形で個別読書の実践がはじまってからなされている。1985年までにすでに3つのレビューが書かれており、個別読書が読みの態度に効果があること、しかし、それだけでは他の読みの手法とくらべて特に効果的とは言えないことが指摘されてきた。

2000年代には、個別読書の効果をめぐって2つの異なる方向のレポートが提出されている。まず、2000年、NRP(National Reading Panel)が、個別読書の効果をサポートする研究には信頼性のおけるものが少ないことを述べて、衝撃を与えた。これはアメリカの研究や教育政策・実践にも大きな影響を与えたらしく、これ以降、個別読書の効果についての研究も減ってしまったそうだ。

一方で、2007年にNEA(National Endowment for the Arts)が、個別読書と読みのスキルの関係を明らかにするレポートを出す。とりわけ、読書を楽しむこととが、学業成績と強い相関を示したそうだ。

このへんの話は、下記の静岡大学の調査で、読むのが好きというのと学業成績の間に相関があったのと似てますね…

[資料紹介] 長時間の読書は学力に結びつかない!? 読書活動と学力・学習状況調査の関係に関する調査研究(2009)

2017.10.28

こんな風に、個別読書の効果をめぐっては様々な方向性の報告があるものの、現時点での最新のメタ分析(Mannning et al., 2010)では、個別読書が生徒の語彙と読みの理解力に影響を与えていることが認められている。

効果的な個別読書のあり方とは

現在では、個別読書についての研究は「単に量をたくさん読いというわけではない」という方向性のようだ。Topping, Samuels, and Paul(2007)は、量と同時に読書の質や教師の存在が重要であることを指摘しているし、Allington(2009)は、個別読書のレビューをした上で、次の5つの要素が重要であると指摘している。

  1. 教師のモニタリングと必要に応じた介入
  2. 生徒が夢中になって読むしかけ(自分で本を選ぶなど)
  3. 授業中に読む時間をとること
  4. 適切なレベルの本を読むこと
  5. 個別読書の最中に他の人との関わりがあること

最後の「他者との関わり」については、古いけど面白い研究も紹介されていた。Manning and Manning(1984)では、「ただ読むだけ(SSR)」、「SSR+教師とのカンファランス」、「SSR+本について議論するピア活動」の3つのクラスで効果を比較したところ、読みの成績や態度がもっとも良かったのは、最後のクラスだったそうである。個別読書に加えてこのような活動を組みこむことの意味について示唆的な研究だと思う。

リーディング・ワークショップの実践者におすすめ

ここからは僕の感想だけど、リーディング・ワークショップは、この上の条件をすべて満たした教え方になっている。実際に生徒が読む本を選び(2)、授業中に読む時間をとる(3)。教師はミニ・レッスンやカンファランスによって生徒の読書に介入し(1)、適切なレベルの本を読めているかチェックする(4)。共有の時間やレター・エッセイなど、他者との交流もある(5)。そう考えると、リーディング・ワークショップってやはりなかなかよく出来た仕組みだと思う。

というわけで、短いながらも個別読書について色々と学ぶところが多かった。リーディング・ワークショップをやっている人には必読とも言える内容。内容的には、下記エントリで紹介した本とかぶる部分もあるのだけど、どちらもお薦めできます。

[読書] 実践者必携、研究にもとづいたリーディング・ワークショップの提案。Miller & Moss. No More Independent Reading Without Support.

2017.09.26

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