一学期のリーディング・ワークショップを(いまさら)振り返る

例年以上に短く感じた夏休みも終わりに近づき、そろそろ二学期の授業をまともに考えなくてはならなくなりました。今日は完全に僕個人向けの、二学期のリーディング・ワークショップをどうするか考えるために、一学期の授業を振り返るという「チラシの裏」エントリ。生徒には「今更かよ!」と言われそう…。

一学期のリーディング・ワークショップ

この一学期にやったのは、高校1年生を対象に、新書を中心とした評論・説明文系にジャンルを限定したリーディング・ワークショップだった。授業時間の配分は、おおよそ次のような感じ。

  1. その時点で僕が読んでいる本の紹介(4分)
  2. ミニ・レッスン(10分)
  3. 読む時間+教師による個人カンファランス(30分)
  4. 共有の時間(3分)
  5. 記録用紙への記入(3分)

この授業コンテンツのうち、昨年秋のリーディング・ワークショップ(下記エントリ参照)と違うのは、「自分が読んでいる本を紹介したこと」「読む時間にカンファランスをちゃんとやったこと」「共有の時間を設けたこと」である。

リーディング・ワークショップ「試運転」の振り返り

2016.12.06

僕が本を紹介したのは良かった

去年はリーディング・ワークショップの冒頭には生徒によるブックトークをしていたのだけど、今年は自分で本の紹介をすることにした。理由は二つ。時間短縮とモデリングである。生徒のブックトークだと合計10分くらい使ってしまうのと、ライティング・ワークショップでは教師も書く姿を見せることが大事なのと同様に、リーディング・ワークショップでも、教師が読んでいる姿を見せることが大事だと思ったからだ。過去に読んだ良い本を薦めるのではなく、「いままさに読んでいる本」の紹介をしていたのもそのため。

これの効果ってよくわからないんだけど、「罪と罰を読まない」「子どもの頃から哲学者」「サピエンス全史」など、ここで紹介した本を読んでくれた生徒もちらほらいたので、まあ無駄ではなかったと思う。何より、大人が「自分も本を読んでいる」ことを示すのは、説得力という点で大切だと思うから、これは今後も継続するつもり。

課題が多い、読む時間のカンファランス

一学期は意識してカンファランスをきちんとやった。やったこと自体は良かった。下記エントリで書いたのだが、カンファランスをすることで生徒の状態を把握(形成的に評価)できる、というのが大きい。自分の個人的経験から、「この本は面白いよ」という会話もできる。

試行錯誤中、リーディング・ワークショップのカンファランス。

2017.05.26

一方で、やはり日本の教室でのカンファランスには限界も大きい。第一、40人学級×複数クラスを相手にしていると、全員とカンファランスすること自体が難しいからだ。1回30分の「読む時間」でカンファランスできる生徒数は10〜12人ほど。40人と話すだけで4回くらいの授業が必要になるのだ。

だから、カンファランスだけを頑張りすぎるのは現実的ではない。「リーディング・ワークショップの記録」をもう少し詳しく書いてもらい、それを通じて生徒の状態を把握できるようにすることと、本を決めるなら司書さんに協力してもらったり、アマゾンのレコメンド機能を積極的に使ってもらうなど、教師一人が丸抱えしないですむ体制を作ることが大切だと思う。ここはまだ「これ」という形が見えていないところ。

より小さな課題としては、カンファランスの記録の付け方にも工夫の必要がある。今のところ、スマホのGoogleスプレッドシートに簡単に書き込んでいるだけ。ロカルノさんが下記リンク先の記事で書かれていた「ポストイット+Evernote作戦」は、残念ながら僕の場合は機能しなかった。面倒くさがり屋の僕には「全てのポストイットに生徒の名前で別々にノート名をつける」ことができず、かといってノート名をちゃんとつけないと検索しても全然ひっかからず…。

高校におけるリーディング・ワークショップ実践~振り返りその4・カンファランスの仕方~

http://s-locarno.hatenablog.com/entry/2017/03/19/205900

「共有の時間」はどうするか?…たぶんやる

「共有の時間」もなかなか悩ましい。共有の時間でやっているのは、3人組になって一人1分「その日の読んだ内容を要約して話してもらい、ひと言感想を付け加えてもらう」こと。

まず、やるだけの意義は感じている。お互いに本の紹介をして本についておしゃべりする雰囲気を作れるのと、「要約する」活動を経ることで自分でその本の内容がちゃんとわかっているか確認もできる。「読者のコミュニティ」の雰囲気を作る上では、この共有の時間は結構大切だ。そうでないと本当に個別の活動になってしまうから。

一方で、この共有の時間は、「読者の権利」10か条の「読んだことを黙っている権利」とはどうしても対立してしまう。下記エントリで書いたように「共有しなくても良い」ということは伝えたんだけど、それで良いのかなあ…? でも、この時間のメリットも感じているので、これは次回もやろう!

教室でどう扱う?「読者の権利10か条」

2017.05.16

影響は?生徒たちの反応は?

生徒たちの反応はどうだろう。リーディング・ワークショップについての匿名アンケートと、文科省「地域における読書活動推進 ため 体制整備に関する調査研究」の項目を参考に作った匿名の読書調査をやってみた(とはいえ、授業者によるアンケートなのであくまで参考程度)。

読書冊数と読書時間は(当たり前だけど)増える

リーディング・ワークショップの授業をやる前(4月)と期間中(5月)を比べてみると、生徒の読書冊数と読書時間(いずれも自己申告)は増えている。

4月の読書冊数

5月の読書冊数

4月の平日の読書時間

5月の平日の読書時間

まあ、これは授業時間をわざわざ使って本を読む時間を確保している(30分×週2回)ので、ある意味当たり前の結果。確保した時間(合計週1時間)以上には読んでいると思うのだが、これがどう継続するかが大事。

有意義だと思っている生徒は多い?

ついで「リーディング・ワークショップはあなたにとって有意義だったか」という直球の質問。教師の作ったアンケートなので…という諸々のことはおいておいて結果だけを見ると、以下のようになる。

45%の生徒が「有意義」を選び、「まあ有意義」まで入れると9割の生徒が入るので、僕の他の授業アンケートとくらべても打率としては悪くないほう。代表的な理由としては、

  • ふだん読まないので読むきっかけになった
  • 読む時間が増えた/確保できた
  • 新しいジャンル(論説文系)を知ることができた
  • 読むことの楽しさを知った
  • 自分の課題がわかった、自分の読書で足りないものがわかった

があげられる。このアンケート、自己申告だし、教師がとっている時点で社会的望ましさの影響もあるし…と色々とアラがあるのだけど、おそらく「リーディング・ワークショップは、ほとんど本を読んでいない層に、本を毎日読むきっかけを与え、読書時間を増やしている」という期待は持ちたくなる。リーディング・ワークショップをやるかどうか迷っている方は、ここにどこまでの価値を見いだせるかではないだろうか。

二学期はどうしよう…

さて、二学期はどうしよう…リーディング・ワークショップ自体はやるつもり。基本的な形態は変えないけど、カンファランスのやり方はひきつづき課題である。あまり深くつっこまないでたくさんの生徒と話をする。今みたいにターゲットをある程度決めてそれなりに(といっても2〜3分くらい)話をする。どちらにしよう。

もう一つ気になっているのが読書会だ。僕は基本的に個別自由読書(independent reading)こそが読書の力を伸ばすと思っているし、ナンシー・アトウェルの影響で「個人が本を選択できること」を重視しているので、全員必修の形での読書会にはあまり積極的ではない。でも、リーディング・ワークショップ内で有志の読書会ができたらいいなとは思ってる。面白そうな本を選んで紹介したら、参加してくれる生徒はいるかなあ。来学期は、それにもチャレンジしてみたい。

この記事のシェアはこちらからどうぞ!