[読書] 親や教師は読むといいよ!小木曽健「大人を黙らせるインターネットの歩き方」

これは面白い本だ。タイトルは一見子どもむけのようだが、その実大人に読ませる気満々だし、実際に大人、特に親や小中高校の教師は読んでおくといいと思う。お勧めできます。

必読・大人を黙らせる一言

この本は3部構成。第1部がメインともいえる「大人を黙らせるインターネットの「ひとこと」」。それから、全国を講演で飛び回る著者の講演録が第2部、その質疑応答が第3部だ。やはり面白いのは第1部。ここでは、大人がいかにも言いそうなことにどう反論し、どう納得させるか、その「撃退法」が書かれている

  1. 「スマホ依存チェックシートです。チェックしてください」と言われたら
  2. 「ネットの情報なんて、ウソばっかりで信用できないよね」と言われたら
  3. 「また寝坊して!我が家では〇時以降のスマホは禁止よ!」と言われたら
  4. 「ネットのせいで陰湿なネットいじめが起きるんだよ」と言われたら
  5. 「スマホばっかりやっていると、頭が悪くなるわよ」と言われたら

などなどの状況下で、どう反論すれば良いかが書かれている「撃退マニュアル」なのだ。

問題の本質はどこにあるのか?

この本が繰り返し形を変えて書いていることをまとめると、要するに「その問題、スマホのせいってされているけど、本質は違うんじゃないの?」ということだ。典型的なのがネットいじめで、ネットいじめはスマホがなくなれば消えてなくなるわけではない。別の形になるだけだ。問題の本質は、ネットではない。まずは原則として、大人の側が、「スマホやネット固有の問題」と「そうでない問題」を切り分ける必要がある。

原則論や本質論だけでは解決しない

しかし、現実には、スマホが引きおこす(かのように見える)トラブルへの対処で、僕たち教員は疲弊している。それもまた事実なのだ。くり返し続くトラブルへの疲労感が、未知なものへの不信とあいまって(高年齢の教員は、本当にスマホを使わない)、スマホを悪者にしたてあげ、それさえ禁じれば問題が解決するように思い込みたがる。いや、もしかすると、問題が解決できなくてもいいから「学校以外の場所で起きてほしい」のだ。そのくらい、学校現場はスマホに疲れている

だから、おそらくこの本の論法を使って「それって本質的にはスマホの問題じゃないよね」と言い続けても状況は良くならない。まして、当事者の生徒が言ったら逆効果だろう。多くの教師は、そんな本質論はどうでもいいから、スマホがもたらす(ように見える)目の前のたくさんの面倒なトラブルを、まずはどうにかしたいのである。

指針となる第2部、第3部

そのためには、やはりこの本の第二部や第三部で書かれていることが指針になってくるのだと思う。これは、筆者が各地で行っている講演の内容が文章でまとめられているもので、それだけによく練られていて、わかりやすい。筆者の掲げる「玄関のドアに貼って困ることはネットに書いてはいけない」という原則は、「玄関には表札があるがネットに本名を書いてもいいのか」と揶揄されることもあるけれど、世代を超えたわかりやすさ(教師も子どもも納得できる、というのが学校ではけっこう大事)と安全面のバランスで、やはり価値のある提言だと思う。

親や教師におすすめできる本

この本の第1部の論法を実際に親や教師に実践できる生徒は、両者の間に権力関係がある以上、そう多くないだろう。筆者もそれはもちろん承知のはずで、だったらやはりこの本は「親や教師こそ読むべき本」なのだ。できれば、現実の問題への対応に嫌気がさしていない、落ち着いて読める時に。ここに書かれていることを「たしかに理屈ではそうだよね」と教員集団で共有できるだけでも、生徒のスマホ利用指導に対するスタンスはがらっと変わる。また、そうであってほしい。

ちなみに、僕もさっそく勤務校の同僚に紹介したら、以前小木曽さんに講演に来ていただいた経緯もあって、一週間もたたないうちに2名が読んでくれた。理科の先生によると「ブルーライトの説明は完全に間違ってる」そうなのだけど、でも全般的には好評だったようだ。「ネットだから特別なのではない。ネットモラルがあるのではなく、モラルがある」という原則を、また一緒に確認できただけでも本当に良かった。そういう合意を校内で作るには良い一冊だと思う。

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2 件のコメント

  • スマホは持っていないので、何とも言えませんが、少なくとも必須アイテムではないようです。
    大人対子どものような図式でなくとも、「こんな場面、あなたならどう言う・どうする?」という感じの授業は昔やってました。『人を動かす』D・カーネギー 創元社 を使って。子どもたちは大人の立場や子どもの立場などいろいろな立場で一種のロールプレイを楽しんでいました。頭の体操になると思います。最近では「回転ずしで話がはずんで居座っている大学生。店には待ってる人の列。あなたが〇〇なら。。。」というのを大人相手にやりました。立場を変えて考えると、いい着地点がみえてくるようです。面白いですね。

    • 「人を動かす」は確かに、立場を変えて相手のことを考える発想の宝庫ですね。教師が立場を変えて生徒視点になること(そしてその逆も)、本当に大切ですね。