試行錯誤中、リーディング・ワークショップのカンファランス。

高校の授業でのリーディング・ワークショップ(RW)も、全クラス2回目が終了。今回のRWでは、昨年はあまりできなかったカンファランスをしっかりやろうと思って試行錯誤中。今回のエントリは現状のやり方について書いてみて、課題にも触れてみたい。

目次

静かな教室…話しかけていいの?

昨年秋、帰国後に本格的にリーディング・ワークショップを始めて戸惑ったのは、「話しかけていいの?」ということだった。生徒が本当に静かに読んでいるので、かえって邪魔じゃないかと思ったのだ。また、ライティング・ワークショップと違ってカンファランスのときに読むものがないので、カンファランスしにくいということもある。それで、昨年は本選びをしている生徒に声をかけたくらいで、あとは自分も一緒にその時間本を読んでいた。モデルを示すというのは、それはそれで大事だとも思っていたしね。

リーディング・ワークショップ「試運転」の振り返り

2016.12.06

今学期のカンファランスのやり方

しかし、今学期はそれを反省して、できるだけ基礎基本通りにカンファランスを実施している。具体的な手順はライティング・ワークショップと同じ。まず、大福帳に似た「リーディング・ワークショップの記録」という用紙をつくり、そこに毎回の授業の簡単な報告を書いてもらう。

ちなみにこの記録用紙は、毎回の報告のほか、今回のRWの目標、読んだ&途中でやめた本リスト、いつか読む本リスト、目標の自己評価なども書いてもらう欄がある

僕は、毎回の授業後に、この記録を全員分チェックする。その時に気になった生徒がいたらメモして、次回の授業でカンファランスに行く。これも、僕のライティング・ワークショップと同じやり方だ。

カンファランスの目的は、「その生徒が本を楽しく、かつ理解して読めているかのチェック」程度。アトウェルが「チェック・イン」と呼ぶ気軽なカンファランスだ。まず「どんな感じ?」と声掛けしてから、生徒の「リーディング・ワークショップの記録」で彼の目標や読んでいる本を確認。それから、「面白く読めてる?」「これまでのどころどんな話?」「書き方に説得力は感じる?どうして?」「君の目標は何だっけ?」などなど、本当に簡単にチェックするだけだ。

カンファランスで聴く質問は、基本的にアトウェルのReading Zoneの質問例を参考にしている。

観点としては、

  1. 生徒がその本を楽しく読めているか
  2. 生徒がその本を理解しているか(ざっと要約できるか)
  3. 生徒の目標にあっている本か

あたりの確認が中心だ。今のところ、こういうやり方で、一回の授業で約12名~15名くらいのペース。もう少したくさんの生徒としたい。カンファランスの記録は、今のところ手持ちのスマホで、スプレッドシートに書名やカンファランスの感触を簡単にメモする程度。もっと手軽に記録がとれたらいいのになあ。

…と思っていたら、ロカルノさんが過去にブログでEvernoteを使ったカンファランスの記録について書いておられた。僕はEvernoteユーザーではないけど、これは一度試してみよう!

高校におけるリーディング・ワークショップ実践~振り返りその4・カンファランスの仕方~

http://s-locarno.hatenablog.com/entry/2017/03/19/205900

カンファランスの効果はあるの?

そんなカンファランスだけど、今のところ、やるだけの価値を感じている。生徒の目標に照らしあわせてちょっとした助言を送ることができるし、おおざっぱだけど理解度を確認することもできる。読んでいる本が難しい、あるいはちょっと退屈気味の生徒に、もっと平易で向いていそうな本を進めることもできる。読んでいる本の関連図書をお勧めできるのも良い。静かに本を読んでいるところに声がけするときはやはり気が引けるけど、「静かに集中して読んでいるように見えて、実は困っている」生徒がいることもわかったので、今後もカンファランスは続けていこうと思う。

カンファランスの課題は?

カンファランスの大きな課題は2つ。一つは、ライティング・ワークショップと同じく生徒数(クラスあたり40人×4クラス)の問題で、これはちょっとすぐには解決できる気がしない。根本的には、個別の生徒に対応するには40人は多すぎる。

もう一つの課題が、とにかく「僕がもっとたくさん本を読まないといけない」ということ。実際にカンファランスをしてみると、カンファランスの成否は、教師がいかにたくさんの本を読んでいて、「ふさわしい本を、ふさわしい時に」紹介できるかにかかっている気さえする。

例えば、今井むつみ「ことばと思考」を読んでて、サピア・ウォーフ仮説を面白いと思った生徒がいたら、「もし右や左がなかったら」や「言語が違えば、世界も違って見えるわけ」を勧めたり、もう少し難しい本にチャレンジできそうなら、批判としてスティーヴン・ピンカーを紹介したりした。

僕は言語学の専門家ではないので以上の推薦が妥当でない可能性もあるのだけど、とにかく過去の読書歴から関連本を薦めている。当然、その本が図書館にあるのかどうかもわからない時は、検索したり、司書さんに尋ねたりするのだが、その時間ももったいなく感じるほどだ。

実際に自分でカンファランスすると、アトウェルの学校の教師たちが、学校の本棚の本をたいてい読んでいて(「100%ではない」とさらりと言っていた)、どこに何があるか把握していたことのすごみが、あらためて思いだされる。でも、これってリーディング・ワークショップの教師には必要なんだ。僕も、10代の生徒に勧められる本をもっと読もうと改めて感じている。

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2 件のコメント

  • 40人の生徒を相手に一人の先生が奮闘するのは大変そうですね。20人ぐらいならおもしろそう。
    また、逆に120人の生徒に三人の先生、もしくは6人の先生がつくような形の方が幅広く対応できそう。
    単独のクラスでやっていくよりも学年や学校あげての取り組みができると単独の先生の名人芸に頼らなくてもよさそう。学習環境も格段によくなりそうだし。

    • そうですね、見学したアトウェルの学校も15名くらいでした。複数の先生のほうが幅が広がると言うのは、仰る通りですね。それぞれ得意分野苦手分野ありますものね。結局、「一人の先生が40人を教える」という勤務校の(日本の?)標準的スタイルとこの授業が合わないのかもしれません(苦笑)