どうやれば効果的?作文のピア・フィードバック(2)

前回のエントリに引き続き、作文のピア・フィードバックについて書いてみたい。今日は、「できるだけ育成コストを抑えつつ、よりましなピア・フィードバックのやり方はないだろうか?」という問いについて考えてみる。

そもそもメリットは? 作文のピア・フィードバック (1)

2016.10.24

ピア・フィードバックの基本的パターン

ピア・フィードバックといっても千差万別だ。たとえば「1対1のペアでやるか、それともグループでやるか」「書いてコメントするか、口頭でコメントするか」というやり方の違いもあれば、「文章の形式についてフィードバックするか、それとも内容面か(あるいは両方か)」という、フィードバックの焦点の当て方についての違いもある。「いったいどのやり方がベストなの?」と聞かれたら「たぶん文脈による」と答えるしかないのだけど、おおざっぱな傾向をまとめておこう。

書くか、口頭でのコメントか。どっちが良いの?

文章によるフィードバックと口頭でのフィードバックについては、多くはないにせよいくらかの研究がある。それによると、文章によるフィードバックは文章の形式面に言及しやすい傾向があるのに比べ、口頭によるフィードバックは全体のアイデアなど文章の内容面にフォーカスする傾向があるという(Beach & Friedrich, 2006)。また、口頭でのフィードバックのほうがよりインタラクティブで、生徒にとっては魅力的だともいう(Neuwirth, Chandook, Charney, Wojahn & Kim, 1994; Nicol, 2010)。さらには、生徒が自分の作品についてクラスメート(や教師)と語り合うことは、書き手としてのオーナーシップ(自分がこの文章の書き手であるという感覚)を高めるという効果もある(Cremin & Myhill, 2012)。こうしたことを考えると、口頭によるフィードバックのほうに魅力を感じる。

一方で、生徒の自由度が高くてインタラクティブなぶん、前エントリで示したような「ピア・フィードバック活動の難しさ」が露見しやすいのも口頭でのフィードバックだろう。ふざけてばかりになる、逆に「安心安全な場」ができず険悪な雰囲気になる、ということは、文章でのフィードバックよりも口頭でのフィードバックのほうが起きやすそうだ。

そもそもメリットは? 作文のピア・フィードバック (1)

2016.10.24

1対1でやる? グループでやる?

フィードバックを1対1でやったほうがいいか、グループでやった方が良いかについての研究は、僕はまだ見つけられていない。ただ、現場レベルではグループでやることのメリットを強調する実践者もいる(Elbow, 1973; Newman, 1985)。彼らによると、グループでのフィードバックのほうが多くの異なる視点からの助言が得られ、かつフィードバックをする側としてもより多くの作品から学ぶことができるという。これももっともな話である。一方で、グループでのフィードバックには時間もかかる(ペアだったら2ターンで済むところ、4人グループだと4ターンかかる)。また、グループ・カンファランス(グループでの口頭フィードバック)となると、会話が脱線することも多そうだ。そういう可能性は視野に入れておかないといけない。

ピア・フィードバックの事前と事後にこれをやると効果的

ほかで生徒同士のフィードバックで注目すべきなのはGielen et al.(2010)の研究だ。彼らの研究は「フィードバックするだけ」(長所と短所を指摘)、「事前に書き手がフィードバックしてほしいところを指定する」、「事後に書き手がフィードバックに反応する」という3つの群をつくって比較して、後ろの2群がフィードバックするだけよりも文章力の向上に効果的であることを示した。

この論文を読んで以来、「書き手が事前にフィードバックが欲しいところを指定する」「事後に書き手がフィードバックに反応する」という2点は、僕も自分の授業では必ず押さえようとしている。フィードバックがあくまで書き手にとって有益なものでないと意味がない以上、書き手が事前にフィードバックがほしい点を指定するのが効果的なのは、しごくもっともな話だし、もらったフィードバックについて反応する機会を設けることは、フィードバックをきちんと理解・消化しようとする態度にもつながると思う。

文法面の訂正はやらない方が良い?

なお、ピア・フィードバックについて補足しておくと、語句や文法面の訂正を生徒同士でチェックさせるのはあまり効果的ではないのかもしれない。これはそういった研究があるわけではないのだけど、アトウェルやオーバーメイヤーなどの熟練した教師が「やめた方がいい」と忠告している。文法知識が不正確な生徒同士でフィードバックをしても、「一方の生徒が間違った指摘をしたときに、他方がそれを受け入れてしまう」からである。

付言すると、アトウェルの学校ではそもそも推敲過程でのピア・フィードバック自体に積極的ではない。それは専門家である教師の仕事という考え方で、教師によるカンファランス&添削が授業の柱になっている。もちろん、受け持ち生徒数が20人未満だったりと、日本とは色々と事情が違うのだが。

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アトウェルの学校見学レポート(2) どんな授業なの?

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さて、実際の授業ではどうする?

さて、以上のようなことを意識しつつ、実際の授業ではどういうピア・フィードバック活動を組めばいいのだろう?それは、授業の目標・書くジャンル・そのほかの条件にも左右されるはず。でも、上記のようなピア・フィードバックの類型ごとの特性を把握しておいて、それを自分の条件にあてはめて考えてみると良いのではないだろうか。

例えば、僕はいま高校生ではパラグラフ・ライティング形式で小論文を書く課題を課していて、中学生にはこれからショートストーリーを書く課題を課す予定だ。それを例に考えてみよう。

パラグラフ・ライティングの授業では…

先日行った高校生のピア・フィードバック活動では、どちらかというと内容よりもパラグラフ・ライティングになっているかという形式面に留意してほしい思いがあった。そこで、文章の形式面をじっくりとチェックしてもらうべく、1対1で、書くフィードバックを中心にして、口頭ではそれを補足する程度にとどめた(ただ、実際にやってみると「もっと口頭での時間がほしい」という意見が複数あり、書く分量はメモ程度にとどめることに変更した)

ショートストーリーの創作では…

一方の中学生の授業では、ショートストーリーの創作なので、生徒がほしいのは、言語事項面でのミスの指摘というより、「読者としての感想」や「困っている部分へのアイデア」なはず。というわけで、こちらは内容面についていろいろな意見が出やすいように、口頭でのグループ・カンファランスにする予定。

……などと考えてはいるものの、このへんはどう転ぶか実際にやってみないと分からないところがある。まあ、あまりあれこれ考えるよりは、試してだめなら変えてみましょう、という感じ。

もちろん、どのやり方でやっても、本当に良い活動をするには安心安全な場をつくって育成コストをかける必要があるのだけど、授業時間数などの関係でそこまで手間をかけられない事情もあるだろう。また、育成コストをかけた上でも、上記の点を考慮にいれれば、より効果的なピア・フィードバックができるかもしれない。参考までにどうぞ。

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