「10年前」と「10年後」に挟まれて。家族4人でローマ&フィレンツェに行ってきた。

課題の締め切りが近づく中、子供たちの学校がハーフターム休み(イギリスには各学期半ばに約10日の休みがあるのだ)に入ったので、恒例の家族旅行にお出かけ。今回の目的地はイタリアのローマ&フィレンツェ。10年前に、僕が妻と一緒に遅い新婚旅行に出かけたのとほぼ同じルートを、今度は家族4人で尋ねました。今日のブログはその個人的な日記です。

目次

10年前、西洋絵画を見るのが新鮮に

10年前のイタリア旅行は、結婚三年目の新婚旅行(まあ、一年目に行くお金がなかったので…)。予習派&知識から入る派の妻が『まなざしのレッスン』や『西洋絵画の主題物語』を事前に読んで、必要な予約も全部やってくれて、僕はその彼女のレクチャーを受けながらふむふむと美術館を回っていた。それまで単にぼーっと眺めるしかなかったルネサンスの絵画や彫刻も、知識があるとずいぶん違う楽しみ方ができるのだなあ、という経験が新鮮な10年前だった。

子供たちのそれぞれの楽しみ方

それから10年経って、今度は10歳の娘と8歳の息子も一緒に同じ道を歩いた。それだけで、ずいぶんと時の流れを感じる。

「白のフィオレンティーナ」というルネサンスが舞台の少女漫画が好きな娘(10歳)は、ちょうど10年前の僕のように、行く先々の美術館や教会で、妻に聖書や神話の場面について解説してもらいながら絵画を見て回っていた。漫画で興味を持っていたおかげか、ずいぶんと熱心に時間をかけて見ていたから、きっと楽しかったんだと思う。

ちなみにこの漫画、主人公はフィオレンティーナという画家の女の子なんだけど、ミケランジェロが超かっこいい。圧倒的な実力と才能に裏打ちされた台詞がことごとく上から目線。「彫刻家として俺は現在も…いや未来永劫に渡って頂点に君臨するでしょう」「絵画は求められる技術が平易すぎて、複雑で高度な技術が要求される彫刻と比べると、全く魅力もやりがいも感じられないからです」「(フィオレンティーナが)俺が競うに相応しいと判断した時には、俺は絵を描きます。命を賭けても越えられない頂きがあることを、もう一度あの娘に教えるために」という、しびれる台詞の数々。お読みあれ。

一方の息子(8歳)。小学校2年生にして典型的オタクタイプ(何せ好きなのがチェスに数独にパソコンですからね…)の彼は、みんなに合わせて遺跡や美術館などをおとなしく巡るのは不得手中の不得手で正直ツライ。本人だけでなく連れて行くこちらもツライ。ということで、旅行中は彼がいつでも離脱できるように僕がお守役を引き受けていたのだけど、でも、サン・ピエトロ大聖堂では聖堂内の柱の太さを両手を使って計測して歩き回り、ウフィツィ美術館では彫刻の年代をひたすら当てようとし、絵画を見ては聖書や神話とはまるで関係ない独自のストーリーを組み立てと、彼なりの独自の楽しみ方を展開。それに付き合っている僕も、予想外に楽しく過ごさせてもらった。

個人的なお気に入り。ベルニーニの彫刻とサン・マルコ美術館

僕がローマやフィレンツェで好きなのは、ローマのボルゲーゼ美術館にあるベルニーニの「アポロとダフネー」「プロセルピナの略奪」やサンタ・マリア・デラ・ヴィットーリア教会の「聖テレジアの法悦」。ベルニーニの彫刻って、なんであんなに艶かしくって美しいんだろう。肌に触れたら絶対にきめ細やかで柔らかそうだし、太ももに指が食い込んでるし。大理石でできてるなんて信じられない。

DSC06530 2016-06-01 09.24.58

それと、美術館ならフィレンツェのサン・マルコ美術館。人が多すぎるバチカン美術館やウフィツィ美術館よりもゆったり見学できるし、元々の修道院の造りをそのまま生かして美術館になっているのが独特。ちょうど二階に上がったところにあるフラ・アンジェリコの「受胎告知」は、絵の中で天使のいる方角に修道院の窓があって、そこから差してくる日の光が、絵画の中の日の光とぴったり重なる。各個室ごとの壁画も印象的で、「ああ、もともと絵って美術館に飾られるためじゃなくて、修道院の祈りのために使われていたんだ」ということに、今更ながらに気づかされる美術館だ。

DSC06685 DSC06686

また10年後に訪れたいイタリア、次はどんな形で?

たった4日間だけど、二人で来た10年前との違いもあって、なかなか楽しめた滞在だった。「また10年くらいたったら、子供達の手もだいぶ離れるだろうから、夫婦二人で来たいねえ」と妻と話していたところ、「その頃にはわたしがお金を稼いで連れてきてあげるよ」と娘。まあそれにはまだ早い気がするけど、今年から10年たった頃には、どんな形でイタリアを訪れているかな。いや、そもそも本当に来られるだろうか。そんなに現実は簡単ではないかもしれないけど、来られるって信じていたい。

この記事のシェアはこちらからどうぞ!