[読書]アトウェルの学校はどんな学校? Nancie Atwell. Systems to Transform Your Classroom and School

ナンシー・アトウェルが創設した学校Center for Teaching and Learningでの研修が、だんだん近づいてきた。4月11から14日の4日間だ。事前の推薦図書として紹介されたアトウェルの「Systems to Transform Your Classroom and School」(2014)という本をさらっと読んだので、今日はそれについて書いてみよう。創立者アトウェルが、自分の学校について語った本である。

アトウェルの学校ってどんな学校?

In the Middle初版(1987)を刊行した頃のアトウェルは公立中学校の先生だったが、1990年、メイン州に自分の教育実践の場となる新たな学校を開校する。それがCenter for Teaching and Learning(以下「CTL」)だ。大ヒットしたIn the Middle初版の印税などを使ったらしいけど、やることが半端ない!

▶︎ Center for Teaching and Learning (公式ウェブサイト)

このCTL、当初はK(未就学)〜3年生の学校だったのが、現在は校舎を拡充してK−8(中学二年生)まで、各学年1クラスの学校になっている。入学する生徒は、学力や家庭の経済状況が多様になるように慎重に選ばれる。80%の生徒が何らかの授業料減免を受けるらしいので、決してエリートのための私立学校ではないのだ。

この本では、創立者であるアトウェルが、英語(言語)教師という立場を離れて学校全体について語っている。校風をどう作るか、朝の会はどう運営するか、校則はどうする、それぞれの授業の柱となる考えは、評価は、教師の研修は….といったところが中心的話題である。

生徒も教師も尊重される「メンバーとしての権利」

この本を読むと、CTLが「生徒にも先生にも同じことを求める学校」であることがよくわかる。例えば、この学校では日本でいう「校則」に相当するものとしてBill of Rights(権利書)というものがある。生徒と教師が話し合って5年ごとに改定するこの「権利書」は、「誰とでも、みんなと遊ぶ権利がある」から始まって「秘密の権利がある。自分の個人的なことを、個人的なままにしておくことができる」まで、合計で16か条の「権利」が書かれているのだけど、これは生徒だけでなく先生にも適用される。つまり、「生徒はこれを守らないといけない」という形ではなくて、「このコミュニティのメンバーは、先生であれ生徒であれ、この権利を尊重される」という形でルールが決められているのだ。

ちなみにこの「権利」、ダニエル・ペナックの「読者の権利」を思い出させる。彼女は自分のリーディング・ワークショップの中でペナックの読者の権利についても扱っているので(下記リンク参照)、もしかしてこれにならっているのかもしれない。

[ITM]リーディング・ワークショップの基本方針

2015.02.03

生徒も教師もリフレクションが柱

また、この学校では英語以外にも当然算数・数学や歴史や理科も教えられているのだけど、どの授業も基本構成は同じらしい。この本ではリーディング・ライティング・数学について独自の章を立てて紹介しているが、どれも基本的な進め方はワークショップ形式だった。そして、どこでも共通しているのが、生徒の自己評価を非常に重視していることである。

作文の授業の評価については以前にも以下のエントリで書いたけど、これと同じやり方が他の教科でも貫徹されているのだから驚く。自分で目標を設定して、自己評価して、教師との評価カンファレンスや保護者も交えたカンファレンスを行って、それから次の学期の目標を設定する。「目標を設定する→行動する→振り返る→次の目標を設定する」というシンプルな原理のサイクルが、学校での学習を貫徹している。

実はこのサイクルは、生徒だけでなく教師も同じだった。この学校では、ワークショップ形式という共通点の中で、授業では教師ごとの創意工夫に委ねられている部分も大きく、例えばアトウェルのライティング・ワークショップは必ず詩から始まるけど、そのはじめ方も先生によって様々である。生徒にもchoiceが与えられているけど、教師にとってもそれは同様なのだ。そして、そのような裁量権があるのと同時に、教師にはリフレクションが求められている。全ての教師が自分でゴールを設定して、毎日の授業を振り返る記録をとり、学期末には設定したゴールに到達したかの自己評価を行い、さらにミーティングで他の教師からのフィードバックを得る(ちなみに、彼らは毎日お昼の30分間のミーティングも行っている)。

いま大学の授業でリフレクション関連の論文を読んでいるからそう思うのかもしれないけど、アトウェルの学校は「リフレクションが柱の学校」とも言えるんだなあ。

シンプルな原理で貫かれた学校

この本をざっと読む限り、アトウェルの学校は、「メンバーの権利を互いに尊重する」「自分でゴールを決める」「リフレクションする」といったシンプルな幾つかの原理を、学校中のあらゆる時間や場所に適用している学校である、という気がする。教師と生徒が同じことをしている、言い換えると、教師が生徒に求めることに教師も日々取り組んでいるという姿は、学びの先達の姿を示すという点でも、意味があると思う。僕はこれまではアトウェル自身の授業についてでしか読んでなかったけど、なるほど、ああいう発想で学校全体をデザインするとこうなるのか、と思わされる本だった。

ただ、100ページちょっとの薄い本だけに、In the Middleなどアトウェルの他の本を読んでいないと、具体的な姿がイメージしにくいかもしれない。おすすめできる読者は、アトウェルの授業実践をすでに知っていて、彼女の学校に興味を持った人かな?ニッチすぎるかもしれないけど…

この記事のシェアはこちらからどうぞ!