総合学習発表会、中学生が身につけるべきものとは。

昨日、勤務校の中学3年生で総合学習の発表会があった。グループごとに問いをたてて企業や官公庁を訪問し、インタビューして調査をし、発表する会だ。勤務校ではもう長い伝統のある行事だけど、総合学習が必修になる15年前くらいから今のような形式になり、続いている。

さて、今や学校の企業訪問だけでなく、私立学校だと企業とタイアップして商品開発をしたりもするご時世なので、 調べて発表する探究型学習の機会自体は、そう珍しくもない。ただ、指導する学校側の体制の問題として、課題がいろいろあるなあと思う。

誤解を招かないように言うと、生徒たちの発表はどれも一定以上の水準に達していて、中学生としては悪くないどころか上出来だった。特に、ポスター発表形式だったのだけど、プレゼンターの堂々とした態度やわかりやすい説明の仕方、スライドの質などは、一昔まえの中学生とは比べ物にならない水準があって、近年の中高生のいわゆるプレゼン能力の高さには舌を巻くばかりだ。

一方で、「見せる」以外の研究の基本的な部分については、正直なところまだまだという気もする。色々な訪問先を選んで精力的に取材し、それをきれいにまとめて発表しているのだけど、

「その問いについて調べることに、そもそもどういう価値があるの?」
「その問いについて調べるのに、なぜ他の方法ではなくその方法を選んだの?」
「その問いについて調べるのに、なぜ他の訪問先ではなくその訪問先を選んだの?」
「その訪問先での取材内容が、全体の結論にどのように結びついているの?」


という部分が、正直なところまだまだ弱い。本当はそれぞれの要素が緊密に結びついて問いから結論に至るのが理想なのだろうけど、発表会で審査員から高い評価を得たグループでさえ、つっこみどころが残る現状。

これって、もちろん教えられないと意識できないことなので、生徒が悪いというよりも、結局は指導している学校側の問題である。例えば、図書館で行う「読書科」の授業を設けて探究型学習を年間カリキュラムに位置づけている関西学院中学部のような指導体制が取れれば、文献探索の能力や論理だった調査を行う能力は向上するだろう。しかし、総合学習の枠の中ではそのような体制がとれないのが勤務校の現状だ。

また、別の観点から、「そもそもプレゼン能力はもちろんのこと、研究発表の能力向上を重点に置く必要があるのか」という逆方向の批判もありうる。研究発表会があることの一つの弊害は、「発表会で発表しやすいテーマ」が選ばれやすくなるということだ。「最後に発表会を行うと、あらかじめその文脈を考えて取材先を選び、取材してきてしまう。それ以外の観点で対象を見られなくなる。まずはアウトプットを気にせず、自分の五感で現実を感じ取れればそれで充分だし、それに専念すべき」という意見もあるかもしれない。

うーん。中学生段階の総合学習で身につけておくべき資質や態度って何だろう。プレゼン能力、研究能力、文献探索能力、そんなことよりもまずは自分の目で見て歩くこと…。もちろんどれか一つに絞る必要はないのだけど、時間が有限である以上、どこかで配分を考えざるを得ない。図書館に関わる司書教諭として、このことは同僚と話し合っていかないといけないなあと思う。

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