ライティング・ワークショップ参考文献




そんなわけで、昨日から今日にかけて、福井に行ってました。授業見学をさせていただいて、ついでに僕もライティング・ワークショップについて30分ほどお話させてもらった。授業見学の感想は後日書くとして、僕が話をする時に資料として配布した「ライティング・ワークショップの参考文献」を、ここにも掲げておきます。ライティング・ワークショップにちょっと興味のある方、どうぞ!

まずは、「ライティング・ワークショップって何?」という方への基本の2冊。

①ラルフ・フレッチャー&ジョアン・ポータルピ(小坂敦子・吉田新一郎訳)(2007)『ライティング・ワークショップ ―「書く」ことが好きになる教え方・学び方―』新評論


原題はWriting Workshop : The Essential Guide。原題の通りエッセンスつかめる本で、僕も最初の一冊はこれでした。ただ、実際には色々なタイプのライティング・ワークショップがあり、これが「正しいライティング・ワークショップ」とは思いこまない方が良い。

 

 

②プロジェクト・ワークショップ編(2008)『作家の時間―「書く」ことが好きになる教え方・学び方【実践編】―』新評論

 



 

上述の本に続いて新評論が出した日本の小学校での実践版。特に小学校の先生でライティング・ワークショップに興味のある人は、まずは上の2冊をお薦めする。

英語の本は自分があまり読んでいないので紹介しにくいのだけど、やはりなんといっても僕のイチオシはアトウェルの実践。

③Atwell, Nancie. (2014) In the Middle:A Lifetime of Learning About Writing, Reading, and Adolescents. Heinemann 



このブログでも読んだ感想を書き続けているけど、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップを車の両輪にして、生徒の読み書きの力を鍛えている。日本語訳、出ないですかねえ…。

 

 

続いて、 ライティング・ワークショップでも重要なカンファランス(個別の作文相談)についての本。

 

④佐渡島紗織・太田裕子(2013)『文章チュータリングの理念と実践―早稲田大学ライティング・センターでの取り組み―』ひつじ書房

 
 


 
 

ライティング・ワークショップのカンファランス(一対一の個人指導)のやり方は、添削するのではなく書くプロセスを支援する点で、ライティング・センターでのチュータリングのやり方と基本的には同じ。この本はどのようなカンファランスが効果的かを考える上で非常に有用な一冊。
 

 

⑤木村正幹(2008)『作文カンファレンスによる表現指導』渓水社

 


 

木村さんは岐阜県の高校の先生(当時。最近は連絡をとってないけど、お元気かしら…)。ライティング・ワークショップの本質をカンファランスにあるとして、「作文カンファレンス」と名づけて作文指導をされている。特にグループ・カンファランスに焦点をあてているのは、生徒数が多い日本では現実的な良いアプローチだと思う。

⑥Anderson, Carl.(2005)  Assessing Writers. Heinemann

Assessing Writers
Carl Anderson
Heinemann
2005-06-03


英語で読んだ中で面白かったのはこれ。著者はカンファランスに定評のある人で、そのコツを書いている。詳しくはこちらの記事にあるので、こちらを参照。

名人教師からカンファランスのやり方を学ぶ

2015.04.04

「ライティング・ワークショップのミニレッスンについての本」というのは日本では残念ながら存在しない。作文教育や文章書き方の本の蓄積は豊富なので、市販の本から良いなと思うものを色々とピックアップして授業で試せばそれでも良いと思う。

ただ、その時にちょっと注意すべきなのは、「授業がノウハウの詰め合わせ」にならないようにすることだ。僕の授業がかつてそうなりがちで、今でも下手をするとその傾向が出てしまうと思う。「役立ちそうな知識」をあれもこれも詰め込むことは、実はあまり有効ではない。「自分はどんな書き手か」「自分は何を書きたいのか」「書くとはどういうことか」を生徒が問い直す機会をミニレッスンで設ける方が、長期的には良いのだと思う。

そして、さすがに本家アメリカのアトウェルは、ミニレッスン専門の本を一冊出している。

⑦Atwell, Nancie.(2002) Lessons That Change Writers. Boyton/Cook Pub

Lessons That Change Writers
Nancie Atwell
Boynton/Cook Pub
2002-09


これは、彼女が実際に授業で行っているプリントを載せて、どんなふうに使っているか解説しているもの。In the Middleを読んでいるとだいたい様子もわかるので、僕もつまみ食い的にしか読んでないんだけど、それでも参考になる一冊だ。

続いて、①や②を読んでライティング・ワークショップをやり始めた方向け。

⑧エリン・オリヴァー・キーン(山元隆春・吉田新一郎訳)(2014)『理解するってどういうこと?』新曜社

 


 

 

この本については感想を以下のエントリに書いた。

[読書]エリン・オリヴァー・キーン『理解するってどういうこと?』

2014.12.30

 

「理解するとはどういうことか?」「授業で本当に大切にすべきものは何か?」ということを考えるための、とても良い本だ。ライティング・ワークショップについての本ではないけど、そのモデルを念頭に書かれている本なので、とても参考になる。いい本だけど、ライティング・ワークショップを知らない人が読んでも実感を持てないかも。型通りやってみて、でもこれでいいのか?と疑問に思っている実践者が読むと一番いいかもしれない。

 
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最後に、売ってないやつを宣伝。

 

⑨あすこま(2009)「作文ワークショップ その紹介と実践の記録」(PDFファイル)

 

僕が勤務校での2009年の公開研究会で作成・配布した50ページほどの小冊子。ライティング・ワークショップの紹介、自分の実践の紹介、当時実践しながら毎週勉強仲間に書いていたメールの文面、参考文献などが書いてある。当時と今では、評価などの考えが異なる点ももちろんあるのだけど、根本的には変わっていない。何より自分で読むと、「若いなあ」と当時の情熱がまぶしく思える(笑)。しかしもう6年前なのか、齢をとるのは早いねえ…。

 

 

 これ、個人的にも思い出深い小冊子なので、興味のある方に読んでいただけたら嬉しいです。ここまで読んでくださって興味のある方がいらっしゃいましたら、個別にコメント欄にメールアドレスつきでご連絡下さい(コメントは非公開にしますのでご安心を)。PDFファイルを差し上げます。ただし、冊子には僕の所属や本名も載っているので、そちらもご所属と本名を書いてくださることが条件です。

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