教育用SNSのつかいどころ

先日、仲間内の定例の勉強会があり、iOSコンソーシアムの野本竜哉さんにゲストに来て頂いて、1時間半ほど、教育用SNSについての実例紹介と質疑応答をした。

ご存知の方も多いと思うけど、教育用SNSとは、一般の(facebookやTwitterなどの)SNSと異なって、教師が場を設定できてそこへのパスワードを配布する形で生徒や保護者が参加するSNSだ。日本発の教育用SNSとしてはednityがあるし、アメリカの教育用SNS大手のedmodoも最近日本語化され、普及がはじまっている。

 ▷ ednity
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 ▷ edomodo

僕は自分でもTwitterを使っててこういうのには興味があるし、一応ednityもedmodoもアカウントを作っている。ednityの方とはお会いしてお話を直接うかがったこともあった。ただ、うちの学校が特に全員にタブレットなりを渡していないということもあって、今のところどうもうまい使いどころが見つからないんだよな、というのが正直なところなのだ。

課題や資料の配布や共有には、ednityやedmodoを知る前から別のサービスを使ってた。また、生徒に何か書いてもらうには、SNSよりも、エクセルファイルの形式などでダウンロードできてローカルに保存できるアンケートサイトのほうが使い勝手がいい。SNSだと、いちいちそのサイトに行かないと読めないという一手間が、僕にはちょっとつらい。

まずは部活動や委員会活動あたりがいいかなと思って、生徒がウェブサイトを作りたいと言ってきた時にednityを紹介したけど、実は生徒のほうがGoogleサイトやOne Driveといった他のサービスを選んだこともあった。生徒からすると、GoogleやMicrosoftのアカウントをすでに持っている生徒が多い中で、わざわざ別のアカウントを新たに作る理由がないのだ。また生徒同士の連絡だけならすでに彼らの間ではLINEを使ってるので、これもわざわざ別のサービスでチャットをするメリットがない。まあ、たしかにそうだよなあと思ってしまう。

では、授業中の活用はどうか。ednityでは奈良女子大附属の二田貴広さんや、袖ヶ浦の永野直さんといった先生方の声が載っている。

 ▷ 他の生徒の意見に触れ、毎日新しい発見をしている。(二田貴広先生/ednity)
 ▷ 対面のコミュニケーションの機会を増やすために。(永野直先生/ednity)

いずれもICT活用では有名な先生たち。このあたりは考える材料になりそうだ。個人の振り返りをツイッターで書くというのは、発想としてはお手軽で好き。ただ、振り返りは、その発言者ごとに時系列を追えないと当人の学習の材料にはならないので、個人別に発言がソートできるようになれば使ってみたい。

ちょっと興味があるのは、授業中にednityで疑問や感想などをどんどん投稿してもらう、というやりかた。確か、ずっと前に東大の中原淳さんがSNSのそういう使い方について、言及していた。

 ▷ ツイッターで授業中つぶやくことは、「よい学習」なのか? 
 (NAKAHARA-LAB.NET)

上の記事ではツイッターでつぶやくことの学習効果の検証が必要と書かれているけれど、少なくともツイッターで授業中につぶやいてもらってそれを常時表示したら、これまでの授業とはずいぶん違った風景が展開されそうだ。

ただ、僕は授業中に生徒の発言を頻繁に拾って授業を作るタイプなのだけど、率直なところ、一見自由に発言させてそこから授業を作っているようでいて、そこにはさまざまな意識/無意識のスクリーニングをかけている。まず、単純に生徒の発言やつぶやきが全て聞こえるわけではないので、その時点で量が絞られる。また、自分が意図していなくても、どうしても自分の関心に沿う方向の発言が聞こえやすくもなっているだろう。更には、まったくピント外れのつぶやきや、悪ふざけだけのつぶやきはあえて無視することもできる(それを、「無視した」ではなく「聞こえなかった」ですますことができる)。

そういったスクリーニングがなくなって、全ての生徒の発言が可視化されるようになったとしよう。その時、自分がその場で果たしてその膨大な情報量をうまく処理できるんだろうか。ツイッターでつぶやきを可視化することには、そんなおそれがある。もちろん、予想外の発言が僕に事前制御されずに可視化されることで、授業展開が予定調和にならない面白さもある。でも一方で、常に授業の質を一定程度には保っていたい。その時に、どうなのかな。

考えを進めてみると、自分の中にある「授業の質を一定にコントロールしたい」「そのために生徒の発言を一定程度制御したい」という欲望が、意外と強いことに気づく。書き始めのころはこんなことを書く予定じゃなかったんだけど、これもまた良し。Discovery Writingだね。そしてこうやって書いてみると、自分の授業観の殻を破るためにも、いつか試してみたいかも、とも思えてくるから不思議だ。

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