司書教諭課程の科目、司書志望の人はとるべき?

この土曜日から、某大学で受け持っている司書教諭課程の科目「学習指導と学校図書館」の授業も開講。以前にこちらのエントリでも書いた苦戦中の授業だけど、今年は事前に他の方にも相談をしたし、また新しい試みをして頑張ろうと思っている。

非常勤の講義「学習指導と学校図書館」終了

2015.01.10

さて、その授業の今年度初回オリエンテーションで、「図書館で働きたいのですが、僕はこの授業をとるべきでしょうか?」という質問を受けた。そこで個別に話を聞くと、まだ司書教諭と学校司書の仕事の違いもあまりイメージできていない模様。それも説明しながら当人のやりたいことを聞き出してみた。わかったのは以下のような状況。

・やりたい仕事のイメージを聞くと、希望しているのは司書らしい。
・教員の仕事にはあまり興味がない。
・しかし、司書教諭の資格や教員免許を持っておくと司書として働く時に有利かもしれない。
・とはいえ、これから免許をとったり司書教諭の科目をとるのは負担なので、迷い中。

僕も自分の知る範囲のことは学校司書の待遇面の悪さも含めてお話したのだけど、恥ずかしいことにあまり詳しくない。そこで、ツイッターで司書の皆さんにお尋ねしながらわかったことも含めて、備忘録代わりに以下に大切な要素をまとめてみる。

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(1)図書館司書の雇用状況は悪い
まず、学校司書であれ公共図書館の司書であれ、常勤の正規職員としての雇用は少ない。したがってパートタイマーとして働く覚悟を固めなければいけない。この不安定な現実を前にしてもなお司書として 働きたいと思うか? が第一のチェックポイント。この時点でやっぱり別の職を選ぶのもおおいにあり。

(2)司書教諭資格は教員になる人がとるもの
次に、司書教諭は基本的に教員免許状を持っている人(教諭。養護教諭や栄養教諭は×)がこの資格をとってはじめて効力を発揮するという点も大事。だから原則的には、司書を目指してて教諭になるつもりがないのであれば、司書教諭の資格をとる意味はあまりない(でもどんなメリットがあるかは後述)。

 ▷ 司書教諭について (文科省)

では、教員養成に必要な授業を履修していない人が司書教諭課程だけを履修して修了証をもらうことはできるのだろうか。これは大学によるようだ。教職科目を履修しないと司書教諭課程を履修しても修了証が出ない大学もあれば、教職科目をとらずに司書教諭修了証をとることができるところもあるということなので、とにかく要問い合わせ。

(訂正)修了証を発行するのはあくまで文科省なので、大学に発行できるのは単位を習得した証明書のみ。いずれにしても、各大学へ確認を。

(3)司書になりたければまず公務員試験の勉強をする
公共図書館の司書は各自治体の公務員試験を受験することが必須なので、司書になりたい人がまず勉強すべきなのはこちら。ただ、自治体での採用は、司書職での採用の場合もあれば一般行政職での採用の場合もある。一般行政職での採用で合格しても、司書資格を持っていれば異動で公共図書館の仕事に回してもらいやすくなることも。とはいえ、最近は市や区の図書館も業務委託が多くなっているので、状況はやはり厳しい。

さて、ここまでの話だと、司書になりたい人が司書教諭資格と教員免許状をとる直接的なメリットはあまりなさそうだ。しかし、将来的なことまで視野に入れるなら、こんな場面でメリットがあるかも。

・もし司書として学校で勤務する(学校司書になる)ことを目指すのなら、教員免許や司書教諭の資格を持っていることがその学校の採用選考時にプラスになるかも。もし採用時にはプラスがなくとも、実際に学校司書の仕事をする上で、教員免許状や司書教諭資格をとる上で身につけた知識や経験が役に立つかもしれない。
・公共図書館勤務を目指す場合も、ここ数年は公共図書館による学校図書館支援の動きもあるので、教員免許状持ちの図書館司書は重宝される。実際にも、学校の教育課程や教職に関する知識や現場での経験は、公立図書館員として学校のサポートに入る時に役立つかもしれない。

ここまでを視野に入れて、そして学生時代にしか勉強をする暇がなかなかとれないことも考えれば、司書志望の人が教職+司書教諭科目をとることも視野に入ってくる。しかし、当然そのぶんの学業の負担はかかるし、とったからといってそれで当面の就職に有利になるわけでもない。なかなか悩ましい選択。というか、実際のところはよほど情熱のある人しかそこまでやろうとは思わないのではないかな。まあここまで話して、あとは本人の選択に委ねたいと思う。

ツイッターで質問にお答え下さった司書のみなさま、どうもありがとうございました。もし修正したほうが良い点があればお知らせ下さい。

 

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